ヒューマニスト23
<その人の指向性、価値観、生き方、考え方>

 


<内橋克人>

 

IAEA会議に合わせ脱原発訴える 東京・福島で(2012年12月15日朝日新聞)
「脱原発」をめざす市民集会「さよなら原発世界大集会」が15日、東京・日比谷公園であり、約1600人(主催者発表)が集まった。同日から福島県郡山市で始まった政府と国際原子力機関(IAEA)共催の原子力安全の国際会議に合わせて、呼びかけられた。
呼びかけ人の一人で経済評論家の内橋克人さんは「雨の中集まった皆さんはどんな困難も乗り越えられる。我々の行動は世界が注目している。明日の結果がどうなろうと、負けずに原発のない日本をつくらなくてはならない」と訴えた。参加者は集会後、東京電力本社前をデモ行進した。また福島県郡山市の原子力安全の国際会議会場外では、市民ら約200人(主催者発表)が廃炉を求める活動を行った。
http://digital.asahi.com/articles/TKY201212150235.html


化けの皮がはがれ始めた 
TPPに反対する経済評論家・内橋克人さん(2013年3月2日朝日新聞)
日米首脳会談で関税撤廃の「聖域」がありうるかのような表明を出しあったのは、日本に対するTPPへの誘い水、米国が日本に「アメ」を先に差し出したということでしょう。米国はそれだけTPPを重視している。日本との自由貿易協定にとどまらず、中国に対抗する安全保障上の意味も兼ねた世界戦略の道具そのものです。一方の中国も輸出先である米国と協調関係を保ちつつ、米国抜きの「ASEAN(東南アジア諸国連合)+3(日中韓)」などを舞台にアジア諸国と経済連携を深めたり、IMF(国際通貨基金)への出資比率を高めたりして、米国主導の経済体制にくさびを打ち込もうとしている。中国はTPPに入らないし、米国も入れる気はない。TPPを実効あるものにするには、日本の参加が欠かせないということです。

だからと言って、米国が日本の農産品をそのまま聖域にする保証はありません。米国は政権交代しても一貫して「経済ルールの米国化」をめざす戦略を取り、戦後の経済交渉では日本が必ず押し切られてきた。北米自由貿易協定(NAFTA)の成功を世界に広げようと企てて失敗した多国間投資協定(MAI)を含め、長い歴史の延長線上にTPPはあるのです。二国間貿易のセンシティビティー(重要項目)に農産品が挙がった、という直近の出来事だけで物事を判断すると間違えます。TPPに参加して農業の競争力を高めるべきだという人もいますが、米西海岸の稲作とは規模が違い過ぎる。「アメは先に、ムチは後で」は、外交の常道です。最初はコメの聖域扱いを容認するかもしれませんが、いずれ保険、医療なども含めた広範な分野で市場開放を強く迫ってくるでしょう。
   *
<米国の覇権戦略> 安倍政権はTPPを成長戦略の一つに掲げていますが、私にはそれが経済成長にどうつながるのか分かりません。日本の製造業はすでに自動車をはじめ現地生産体制を整えていますし、TPPが発効しても米国向け輸出がそれほど増えるはずはない。逆に米国企業にとっての日本の「市場力」の方がはるかに魅力がある。自動車の安全基準などを都合よく変えて、米国の輸出先として活用されるだけではないでしょうか。すでに軽自動車への優遇税制は非関税障壁だと米国は問題にしています。森林大国日本の木材自給率が2割台に落ちたのも、米国の住宅工法にあわせてJAS(日本農林規格)法を変え、木材の輸入関税を撤廃させられたのがきっかけでした。お互いによきものを交換しあう限り、自由貿易の拡大はそれぞれの国の利益になります。米国が入るまでのTPP構想がそうでした。シンガポールは金融サービス、ニュージーランドは農産品、チリやブルネイは鉱物資源といった具合に、お互い得意なもの、足りないノウハウを補完しあう「水平型」の交易圏が狙いでした。米国が掲げる自由貿易は、市場のルールや規制を米国ルールに統一しようとする「覇権型」です。TPPは貿易の枠組み作りだけの話ではなく、どの国も恩恵を受ける自由貿易を進めようというものでもありません。

米国主導に移ってからのTPPは自由貿易の理念より政治外交上の国際戦略という意味合いが強くなったのですが、日米の「聖域」を認めるかのような、その実、あいまいな共同声明が加わって、二重三重の意味で、化けの皮がはがれ始めたといっていいでしょう。

<共生社会に逆行>
 日本では3・11をきっかけに、大規模・一極集中型の経済社会を転換する動きが強まっています。その先にあるのは食糧、エネルギー、ケア(医療・介護など)をそれぞれ地域内で自給する循環型・地域主権型の社会です。成長するための経済効率や市場競争原理を至上としてきた米国スタンダードと決別し、人間生存と環境を主軸にすえた「共生の社会」と言えるでしょう。TPPに参加することで、被災地はじめ小さなコミュニティーで始まった「社会転換」の動きにもブレーキをかけることになるのではないか。TPPは日本が変わろうとしている方向とは真逆にあるという危機感を強く持っています。(聞き手 編集委員・西井泰之)
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 うちはしかつと 32年生まれ。90年代から一貫して規制緩和、新自由主義的な改革の危うさに警鐘を鳴らしてきた。著書に「共生経済が始まる」など。


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特集ワイド:原発の呪縛・日本よ! 経済評論家・内橋克人さん
毎日新聞 2012年06月29日 東京夕刊
 <この国はどこへ行こうとしているのか>

 ◇「生産」より「生存」条件−−内橋克人さん(79)「本当にあっけにとられました。悔しいというか、どう言ったらいいか……」それまで、じゅんじゅんと説くように語り続けていた内橋克人さんが、その場面を振り返るときは何度か言葉を詰まらせていた。今月15日、内橋さんは「さようなら原発1000万人アクション」呼びかけ人の一人として、作家の大江健三郎さん、澤地久枝さん、ルポライターの鎌田慧さんらとともに首相官邸にいた。藤村修官房長官と面会し、脱原発を求める750万人超の署名のうち、野田佳彦首相あての分を手渡すためだった。「藤村長官は、『私も、学生時代は毎日原爆ドームを見ながら大学に通いました』と言ってましたが、本心はどうだったのか」政府による関西電力大飯原発再稼働の最終決定が伝えられたのはその翌日のことだ。かねて申し入れていた面会を、急きょ「前日」に指定してきた官邸の意図は何だったのだろうか。

大震災による東京電力福島第1原発事故から約1年3カ月を過ぎてなお、日本列島では放射能禍が続く。「大飯再稼働が、なし崩し的な原発再稼働のスタートにならないようにしてください」。内橋さんは、面会終了間際にこう「念押し」の言葉を発した。藤村長官はうなずきもせず、無言で応じたという。86年に出版された著書「原発への警鐘」の中で内橋さんは、放射線被ばくとがんとの関係について調査を行った米国のマンクーゾ博士の「スロー・デス(時間をかけてやってくる死)」という言葉を紹介した。文中、博士は言う。<死は徐々に、二十年も三十年もかけて、ゆっくりとやってきます。原子力産業はクリーンでもなければ、安全でもありません。それは殺人産業といっていいでしょう>

原発再稼働の決断を発表する野田首相の演説を聞いて、内橋さんの脳裏には約30年前のこの言葉がよぎった。「首相は『私の責任』と言いましたが、これほど責任のない言葉はない。言葉の矛盾なんです。20〜30年後、野田首相は、端的に言えば政権にいない。さらに野田さんがこの世にいなくなってから生まれてくる命へのリスクに、どう責任を取るというのでしょうか。また首相は『国民の生活を守るため』とおっしゃった。これ、言葉をご存じないんじゃないですかね。生活というのは人間の命あってのことです。生命あってはじめて生活なんで、人間の命というものをリスクにさらしながら生活を守るということはあり得ません。この言葉の空疎さ。今ほど、民意と政治がかけ離れた時代はないんじゃないですか」

この人が「人間の命」と口にする時、確かな説得力がある。「私的な話ですが」と前置きして、内橋さんは戦時下の光景について語り始めた。「神戸大空襲、終戦の年の3月17日と6月5日に、焼夷(しょうい)弾の下を逃げ惑って生きのびた経験があるんです。妙法寺川と天井川が合流する瀬に、たくさんの死体が浮いていました」。今回の大津波でも同じような光景があったはず、と被災地に思いをはせて言葉をいったん切り、こう続けた。「日本は依然として戦前と断絶してませんね。国民の合意なき国策決定のメカニズムも、階層社会と貧困も」民意と政治。福島第1原発事故に、政治が素早く反応したのがドイツだった。大震災発生から2日後の3月13日夜、首相府に政権幹部が集まり、原子力政策についての対応を協議。翌14日には「原発維持」政策からの路線転換をメルケル首相自らが発表した。翌月にはエネルギー政策転換のため、有識者による倫理委員会を発足させた。委員は、「リスク社会論」で世界的に知られる社会学者、ウルリッヒ・ベック氏のほか、政治、科学、哲学、宗教界などから17人。「メンバーには一人として、日本で言うところの『原子力専門家』と称する人はいない。そしてもうひとつ大事なことは、その提言に数字はほとんど含まれていない。技術者が数字をもてあそんだり、一般国民にわかりにくい専門的な言葉で事実を糊塗(こと)するようなことは一切ない」

国の未来を託された委員会は「安全なエネルギー供給に関する倫理」を論じた。何が決まったのか。「一言で言うと大きな判断基準、次の世代が、本当に人間が人間として生きるにふさわしい条件を持続し維持させることができるか。そのために今生きている世代の責任とは何か、ということです」。報告書をまとめたのは昨年5月末だった。ひるがえって日本。大飯原発の敷地内には、活断層の疑いがある破砕帯が通っていると指摘されるが、政府は、専門家の意見を踏まえた原子力安全・保安院の対策で「安全基準をすべて満たしていることが確認された」と言う。「専門家づらした無責任な知識人は、最も倫理から遠い人々なんです。再稼働は福島以後の研究成果をすべて無視した決断です」折しも国会では消費増税法案が衆院を通過した。原発再稼働と増税には、根本的な「矛盾」があると指摘する。「増税は、財政赤字のツケを次の世代に残さないために必要だ、というんでしょう。ツケを残さないといいながら、原発から出る放射性廃棄物のツケはどうなのか。命をリスクにさらす問題では、これからもどんどん未来にツケ回しする。これはもう政治ではない」内橋さんは、「今考えるべきは生存条件だ」と語る。「経団連が、エネルギーがなければ産業が空洞化するとか、国際競争力が衰えるというのは『生産条件』を論じているに過ぎない。かつては物をたくさん作り、生産力を高めれば、人々の生活もよくなった。『生産条件』を上げれば、『生存条件』がよくなる時代もあった。しかし、21世紀の今、両者は対立するようになったんです。環境問題を見ても、労働問題を見てもそれは明らかです」。時折、テーブルをドン、ドンとたたいて問題点を強調しながら、極めて冷静に、論理的に説く。

野田政権の本質を「経団連かいらい政権」と断じる内橋さんは、これからの日本は「FEC自給圏」、つまり食料(Food)、エネルギー(Energy)、福祉(Care)の自給をめざす地域社会をつくるべきだと話す。

「被災地を含む多くの地域で取り上げてくれるようになりました。この三つを地域経済の中で循環させていくことで、十分に生きていける。原発がなくてもやっていけることは、全原発が停止した5月以降証明されている。電力会社の利益確保と経済界の要求に従うことはないんです」語り終えた内橋さんの背筋が鶴のようにぴんと伸びた。穏やかな目には、未来を信じる光があった。【井田純】

■人物略歴◇うちはし・かつと
1932年生まれ。新聞記者を経て、評論活動に入る。昨年、編書「大震災のなかで」を出版。著書「規制緩和という悪夢」などでは市場原理主義を厳しく批判。他に「日本の原発、どこで間違えたのか」など多数。

http://mainichi.jp/feature/news/20120629dde012040069000c.html


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再生、日本政治(2012/01/08日)
貧困の多数派、歯止めを。経済評論家 内橋克人
現代日本の問題点はどこにありますか?
「日本社会でも新たな階層が生まれてきている。国民皆年金など基礎的な社会保障からさえ排除された人たちが多数派となる『貧困マジョリティー』だ。グローバル化やマネー資本主義が進み、非正規雇用が増えて中間層が崩壊する社会の到来は、危険な時代への予兆ではないか」

貧困マジョリティーの特徴とは?

「米国はじめ国内外の最強の秩序形成者に抵抗する力もなく、生活に追われて政治的な難題に真正面から対峙するゆとりもない。同時に精神のバランスを維持するために『うっぷん晴らし政治』を渇望する。政治の混乱を面白がり、自虐的に、極めて反射的に、表面的に評価して、選挙権を行使する。大阪市の橋下徹市長の『ハシズム現象』も貧困マジョリティーの心情的瞬発力に支えられている面が大きい。『地方公務員は特別待遇を受けている』とバッシングし、閉塞状況下の欲求不満に答えていくやり方だ」

政治に対する閉塞感が国民の方向性を誤らせるということですか?
「『政治のリーダーシップ不足』と言われるが、民主政治を基盤とする国でのヒーロー待望論ほど異常なものはない。日本古来の『超天同調主義』に加え、異議を唱えるものを排除する『熱狂的等質化現象』が一体となる。『うっぷん晴らし政治』の渇望を満たそうとすれば、1930年代の政治が繰り返される。グローバリズムが生み出した『貧困ファシズム』の培地となりかねない」

政治問題は山積しています。
「いまの政党政治は一挙に崩れる瀬戸際にある。今年は多くの国で政権交代が起き、政治的に極めて流動化する。グローバル化の流れは変わらず、市場原理主義のもとで、貧困マジョリティーを生み出す『貧困の装置化』が進んでいる。消費増税によって、零細企業や地域経済を支えてきた地場産業は、価格転嫁できずにコスト引き下げを迫られる。所得税なら稼いだ人がたくさん納めるが、日本型消費税は貧困マジョリティーを増殖させる『貧困の装置化』の手段になる」

環太平洋経済連携協定(TPP)についてはどうですか?
「これも同じ。米国の政権が変わっても、米シンクタンクは一貫して『投資の絶対的自由の保証』を求めてきた。日本がTPPに入れば、外資は日本政府を米国の経済法廷に訴えることができる。米企業はオーストラリアでの医薬品への公的補助でさえ『自由市場に反する』と問題視している。日本の国民皆保険制度も目の敵にしているが、これは豊かな人も貧しい人も、ひとたび体を害せば医師にかかることができる制度で、国民的財産、社会的共通資本だ。それが毀損され、一部企業のビジネスチャンスになる。弱いところに社会的変動の影響が収斂する」

日本の政治は何を目指せばいいですか?
「私は新たな基幹産業として『EEC自給圏』を提唱してきた。FはFoods(食料)。日本の穀物自給率は世界で124番目だが、食料自給は国の自立条件で新たな産業も形成する。EはEnergy(エネルギー)。再生可能エネルギーとしてデンマークでは風力発電、太陽熱発電を促進し、エネルギー自給率が今では200%近い。日本は国策として原発に集中し、ほかの選択肢を排除した。CはCare(介護)。市場に任せるのではなく、社会による介護自給圏を形成すれば北欧諸国のように強力な産業になる」「『うっぷん晴らし政治』ではなく、世界のモデルに目を向け、食料、介護、エネルギーの自給圏を志向すべきだ。地味でもいいから、グローバル化の中で、それに対抗できる『新たな経済』をつくることが本当の政治の役割だと思う」
(聞き手・園田耕治)


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