KIJI LISTpoint NEWS LIST

20182019


<POINT NEWS94>2015/05/01・・・(ヒューマニズムの視点で捉えよう、判断しよう)

sankaku94sankaku
2015/05/01sankaku05/05



こどもの日に  貧困の連鎖を断ち切りたい(2015/05/05京都新聞)
 <けなされて育つと、子どもは、人をけなすようになる>で始まる詩をご存じの方も多いだろう。米国の教育学者ドロシー・ロー・ノルト博士の「子は親の鏡」だ。<とげとげした家庭で育つと、子どもは、乱暴になる>と続く前半は、いわば子育ての悪い手本。後半は一転して<励ましてあげれば、子どもは、自信を持つようになる>などと理想が語られる。・・・厚生労働省の調査では、平均的な所得の半分を下回る世帯で暮らす子どもの割合「子どもの貧困率」は2012年時点で16・3%で、過去最悪となった。子どもの6人に1人が貧困状態の社会を放置するわけにはいかない。とりわけ母子家庭は深刻だ。子どもを抱えての就労が難しく、4割以上は非正規雇用で平均就労年収は200万円に満たない。子どもの貧困率は5割に跳ね上がる。貧困には負の連鎖も付きまとう。生活苦で進学を諦め、大人になっても安定収入を得られる職に就けず、貧困にあえぐ。その子どもも同じ境遇を繰り返す。生活保護受給世帯で育った子どもの4人に1人が大人になって再び生活保護を受ける、との調査結果もある。・・・ 子どもの問題では、児童虐待も深刻さを増す。全国の児童相談所が13年度に対応した件数は初めて7万件を超えた。住民意識の高まりで通報が増えたが、それでも数字は氷山の一角ともいわれる。・・・ことわざに「子に過ぎたる宝なし」とある。ノルト博士は著書に「親の姿が、手本として、子どもに生涯影響力を持ちつづける」と記す。次代を担う「国の宝」が健やかに育つには安全な社会環境を整え、安心して手本を示せる家庭を守る必要がある。国や自治体だけでなく、私たち大人の務めでもあり、実現に向けた道筋は少子化の歯止めにもつながるだろう。
http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/

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みどりの日  「森の国」の豊かさ見直そう(2015/05/05京都新聞)
 日本は「森の国」だからだ。森林面積は約2500万ヘクタール。国土全体の約66%、実に3分の2を占め、先進国の中で北欧のフィンランド、スウェーデンに次いで3番目に高い。しかも南北に長い島国で、亜熱帯の沖縄のマングローブ林から亜寒帯の北海道の針葉樹林まで多様性に富む。世界的に珍しい生物種が多い「ホットスポット」と呼ばれるゆえんだ。・・・ 一つは美しい森の荒廃だ。戦後の建材需要に応えて広げた植林が伐採期を迎えても、外国産材の流入と価格低迷から切り出せず放置されている。人工林は森林の4割に上り、多くは建材用のスギやヒノキだけの林だ。天然林の生態系の多様さが失われ、人工林は間伐など手入れをしないと保水力が落ち、山肌ももろくなっていく。
http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20150504_3.html

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社説:憲法をどう論じる 国民が主導権を握ろう(毎日新聞 2015年05月03日)
時代にそぐわない部分があれば、手直しすることもあっていい。だが憲法には、時代を超えて、変えてはならないものがある。自由や平等などの基本的な人権である。これらは「人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果」(97条)として、私たちが享受しているものだ。・・・いま政治に携わり、国を動かそうとしている人々に、憲法へのそうした理解と尊重が、果たしてどれだけ備わっているだろうか。安倍政権と自民党の憲法改正の議論を見ていると、そこには、憲法の本質をゆがめかねない危うさが、潜んでいるように思える。・・・

ただし、憲法を論ずる際、忘れてはならないことがある。国民を縛るものではなく、国や政治家など権力を縛るもの、という憲法の根本原理だ。11条が基本的人権を「侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与えられる」とうたい、99条で閣僚や国会議員、公務員らに「憲法を尊重し擁護する義務」を課しているのは、まさにそのためである。ところが、自民党の改憲草案は、政治家の擁護義務の前に「全て国民は、この憲法を尊重しなければならない」という項目を盛り込んだ。まず国民に憲法尊重義務を課す、という逆立ちした原理が、自民党の改憲論を支える思想なのだ。さかさまの憲法原理が目指す、改憲の目的とは何か。それは、国や政治家が、自分たちの手に憲法を「取り戻す」ことであろう。・・・改憲の矛先を、本丸の9条から96条に変え、国民に受け入れられないと知るや、今度は環境権や緊急事態条項、財政規律条項などを追加してはどうか、という。変えやすいところを変えて、国民の抵抗感を薄め、次の9条改正をやりやすくする、という「お試し改憲」論は、憲法をもてあそぶ態度に等しい。・・・

ここ数年、私たちは、憲法の理念がないがしろにされている現実を、目の当たりにしてきた。長年の憲法解釈をあっさり踏み越えた、集団的自衛権の行使容認と安保法制の拡大。知る権利を制限し、民主社会の基礎である自由な情報の流通を妨げる、特定秘密保護法の制定。震災復興の遅れ。貧富の格差の拡大。選挙に勝てば何でもできると言わんばかりの、異論を封じ込める空気。13条の幸福追求権も、25条の生存権も、さまざまな基本的人権が危機にさらされている。改憲に向けた衆院憲法審査会の議論は、大型連休明けに本格化する。憲法の根本原理を作りかえ、政治が使い勝手を良くするための「押しつけ改憲」には、明確にノーを言いたい。憲法が国民のものである以上、論議の主導権も、政治家ではなく、国民が握るべきである。

http://mainichi.jp/opinion/news/20150503k0000m070078000c.html

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“放射能の餌食” − 原発労働者(あきこ / 2015年5月3日みどりの1kWh)
4月25日にオーストリア・ラジオでショッキングなタイトルの番組が放送された。このサイトでもすでにおなじみのユーディット・ブランドナーさんが、チェルノブイリと日本で、それぞれ原子力発電所での仕事に携わった人たちをインタビューして作った「放射能の餌食。原子力発電所内の労働者」(Strahlenfutter. Arbeiter in Atomkraftwerken)というタイトルの約1時間の番組である。番組のインタビューに登場したのは、日本から斎藤征二さんと林哲哉さん、ウィーンからスヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチさんとユーリー・アンドレエフさんである。ブランドナーさんは、原発労働者への取材を実現するために多くのリサーチを行なったが、なかなか取材にはいたらなかった。福島原子力発電所に作業員として入り、現場の様子を描いた漫画家との取材がようやく実現しかけた矢先、出版社から取材キャンセルの連絡が来た。さらに仙台でホームレスの世話をしている神父とインタビューする案もあったが、これも立ち消えになった。ブランドナーさんの3年越しの粘り強い努力が実り、2014年の初夏、かつて原発労働者として働いていた斎藤征二さんとのインタビューが実現したという。・・・斎藤さんは、健康上のリスク、雇用システムや賃金の問題など、原発労働者が直面する問題を詳しく語る。彼自身、甲状腺の摘出手術、心筋梗塞を患い、脊髄、骨髄にも異常があり、インタビュー直前には目の手術を受けたばかりだという。斎藤さんは自分自身の体調異常だけではなく、死亡した仲間の労働者たちの状況、原発での事故についても詳細に記録してきた。また、仲間たちがどのような形で雇用されたのかについても記録し、雇用の多重構造についても明らかにした。斎藤さんは仲間を説き伏せ、1981年7月1日労働組合「原発分会」を結成した。・・・

組合を結成したときには、斎藤さんの妻までがいろいろな嫌がらせを受けたという。「玄関のガラス戸が割られました。いろんな嫌がらせがあったのですが、一番多かったのは無言電話です。労働組合を作ることの何が悪いのか、自問しました。そして腹立たしくなりました。闘い続けるしかないと思ったのです」と斎藤さんはインタビューで語っている。・・・斎藤さんが語る原発労働者の状況は、1977年に発表されたロベルト・ユンクの著書『原子力帝国』の記述と一致する。ユンクがフランスのラ・アーグにあるプルトニウム抽出のための再処理工場を調査した労働条件と、斎藤さんが話す労働条件はほぼ同じだ。ユンクは同書の中でラ・アーグの再処理工場について、「未だかつてないほどにここの仕事は不安を覚えさせた。労働者はここでは健康だけではなく、言葉や自己決定の権利を奪われている。・・・僕だって不安ですよ。でも僕が黙ってしまえば、何も変わらない。やましいことはありませんから。逆に、僕が名乗りをあげることによって、相手方は僕に何かをすることが難しくなると思います。偽名や別名を使うほうが危険でしょう。名前を名乗り、顔を見せるほうが、安全だと思っています。もし僕が何も語らなかったら、何も変わらないでしょう。この状態で終わらせたくないのです。福島の原発作業に携わる90%は日雇い労働者。彼らが年間線量を超えれば、次の日雇いがやってくる。線量を超える。また次の労働者といった繰り返しの中で、林さんは、いずれ労働者が不足する事態が来ると考えている。廃炉までには30年、40年がかかる。林さんは、「こんなやり方で労働者を確保することはできません。そして、作業員がいなくなったら、それは日本だけではなく、世界も巻き込むことになるでしょう」と語る。

http://midori1kwh.de/2015/05/03/6813

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外国メディアが問題視する安倍政権のメディア介入(じゅん / 2015年5月3日みどりの1kWh)
自民党の情報通信戦略調査会がNHKとテレビ朝日の幹部を呼びつけ、個別の番組について事情聴取し、その後、同会の川崎会長が「政府はテレビ局に対する許認可権を持つ」と威嚇的な発言をするなど、このところ安倍政権のメディア介入が露骨になってきている。こうしたメディアへの介入が国内だけではなく、外国の特派員にまで及んでいることも最近明らかになった。外国メディアの報道から、いくつかご紹介する。

・・・ 「政治はメディアに絶えず干渉する。テレビ朝日とTBSの、政権に批判的な4つの報道番組の担当者は、毎日こうした圧力と戦わなければならない。安倍政権がこれらのテレビ番組を潰したいと願っていることは、よく知られている」。このように語るのは、武蔵大学のメディア学教授、永田浩三氏である。・・・安倍政権は目下、メディアに対してものすごい圧力をかけているが、特に安倍政権に批判的で、その歴史修正主義の路線に同調しないリベラルで、クオリティー・ペーパーとみなされている朝日新聞とその系列のテレビ局への攻撃は凄まじい。こうした政権党のキャンペーンは効果をあげており、多くの読者がそれに同調して朝日新聞の購読をやめ、第二のリベラルな毎日新聞までもが、自分自身が批判にさらされるのを恐れてか、あるいは朝日離れした読者を獲得しようという計算からか、朝日新聞批判に回った。・・・ナイトハート記者は、最後に「今の日本は、専制政治への三段飛び、ホップ、ステップ、ジャンプの第二歩目、ステップの段階だ」という古賀茂明氏の説を紹介している。それによると、最初のホップの時期は、メディアが何を報道すべきか、報道してはいけないかについて政府が絶えず干渉する時期、次のステップは、政府の絶えざる干渉に疲れ、メディア自身が自主規制する時期で、その結果、市民は情報を知る権利を奪われる。現在の日本はこれにあたる。最後のジャンプは、国民が専制政治的な政府を自ら選ぶことだという。
http://midori1kwh.de/2015/05/03/6819

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パプアニューギニアでM7・5 日本に津波の心配なし(2015/05/05共同通信)

 【シドニー共同】米地質調査所(USGS)によると、南太平洋のパプアニューギニアのニューブリテン島で5日午前11時44分(日本時間同10時44分)ごろ、マグニチュード(M)7・5の地震があった。
http://www.47news.jp/CN/201505/CN2015050501001302.html

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戦後70年、憲法の岐路 安保法制に「9条壊すな」・中国台頭に「変わらねば」(2015/05/04朝日新聞)
憲法改正に反対する市民や労働組合は、横浜市西区の臨港パークに集まった。主催者発表で約3万人がプラカードやのぼり旗で「9条を壊すな」などと訴えた。首都圏では昨年まで二つの大きな護憲派集会が開かれてきたが、改正論議が高まる今年は「憲法を守る」一点で結束し、合流した。昨年の二つの集会の参加者は計約5千人。実行委員会は「目標は1万人以上だったので3万人には驚いた。市民が危機感を抱いている表れだ」としている。呼びかけ人の一人として今年80歳になったノーベル賞作家の大江健三郎さんが登壇した。自衛隊と米軍の関係強化をうたった安倍晋三首相の米議会演説について「日本がアメリカの戦争に対して非常に力強い仲間になろうとしている」と指摘。戦争への不安も訴え、「私のような老人が人前に出て話をするのは最後。はっきりした意志を持ち、憲法を守る」と訴えた。また憲法学者の樋口陽一さんは、自衛隊の活動範囲を地球規模に広げようとする安保法制について「日本人が武器を持たずに(世界の)飢えや環境破壊を減らそうと地道な貢献をしてきたことが戦後の誇りだった。役割を超えた『国防軍』を世界に送り出そうとしている」と批判した。

http://digital.asahi.com/articles/DA3S11738097.html

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「ナチス時代を知る責任ある」 独メルケル首相、国民へ呼びかけ(2015/05/04朝日新聞)
ナチス・ドイツが連合国に降伏してから8日で70周年になるのを前に、メルケル独首相は2日、国民に歴史と向き合うよう呼びかける映像メッセージを政府ホームページに公開した。メルケル氏は「歴史に終止符はない。我々ドイツ人は特に、ナチス時代に行われたことを知り、注意深く敏感に対応する責任がある」と訴えている。

http://digital.asahi.com/articles/DA3S11738133.html

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菅原文太さんとは「同志的連帯」 妻が語る辺野古問題(2015/05/04朝日新聞)
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の辺野古(同県名護市)移設を阻止するため4月に作られた「辺野古基金」に、全国から1億1900万円を超える寄付が寄せられた。その共同代表の一人が、昨年12月に亡くなった俳優菅原文太さんの妻文子(ふみこ)さん(73)。「現政権への不服従を示すため」に代表を引き受けた思いと、文太さんと平和について語った日々を振り返った。・・・昨年11月、菅原は沖縄県知事選で翁長雄志知事の応援演説をし、こう訴えました。〈政治の役割は二つあります。一つは国民を飢えさせないこと、安全な食べ物を食べさせること。もう一つは、これが最も大事です。絶対に戦争をしないこと〉

結婚生活47年。菅原とは「同志的連帯」みたいな感じで、仕事を選ぶ時も社会にとって良いことか、ということで選んできました。私が彼から教わったのはジャズとボクシングと格闘技の知識くらい(笑)。忙しい彼に代わり、新聞や本を読んで気づいたことを「いまこんな事が問題みたい」と伝えると、彼は「おお、そうだな」と。そんなふうに2人でやってきました。・・・晩年、菅原は、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定をし、安保法制の整備を進める安倍内閣の動きを心配していました。「子どものころの雰囲気に似てきた」と。軍国主義時代に生まれ育ち、死ぬときも軍事国家に向かおうとする国で一生を終えるのか、と先行きを憂えていました。

http://digital.asahi.com/articles/ASH515TW1H51UTIL046.html?iref=com_alist_6_01

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(声)首相演説、「反省」の本気度を疑う(2015/05/04朝日新聞)団体役員 棟居勇(神奈川県 79)

安倍晋三首相が、米国の上下両院合同会議で演説した。先のバンドン会議でも同様であったが、先の大戦についてどのような歴史認識を表明するか、国内のみならず海外からも注目を集めた。先の大戦に対して「痛切な反省をする」とは言う。しかし「謝罪」に関しては明言を避ける。それは「反省」についても本気度を疑わせる結果に終わるだけではないのか。首相の発言は「歴代首相の立場を継承する」にとどまり、それ以上には踏み込まない。「継承するのは言うまでもないが、私から改めて痛切な反省の念と謝罪を申し上げる」と言ったならば、どれだけ力を持ったことだろう。歴史に残る発言となったはずだ。それを欠いたことで、中国や韓国といった周辺諸国の心を少しも動かさない、価値なき発言となったように思える。・・・
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11738023.html

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(声)国民は軽んじられてもいいのか(2015/05/04朝日新聞)無職 森田博信(神奈川県 63)

安倍晋三首相の米議会演説を読み、日本人として、とても寂しい気分にさせられた。安倍首相の脳裏に、国民の存在がどれほどあるのかと思ったからだ。安全保障の法整備について「この夏までに成就させます」「必ず実現します」と断定的な発言がなされた。しかし、まだ国会審議すら始まっていない。「国民の総意をとりまとめるべく努力していきます」程度の控えめな表現にするべきだった。このことは、国会審議でたとえ反対意見が出ても最終的には通ると、安倍首相がたかをくくっていることにほかならない。それほど国会が軽視されている。国会議員を選んだ国民も同様に軽んじられているのだ。なぜ、このような状況が生まれてしまったのか。昨年末の衆院選、今春の統一地方選で、投票率が軒並み戦後最低を更新するなど、国民の政治に対する無関心さと無関係ではあるまい。国民は、主権者としてよみがえるには何をするべきなのか。私たち一人一人が真剣に考えなければならない。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11738024.html?ref=pcviewpage

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憲法記念日に  平和国家の歩みを続けよう(2015/05/03京都新聞)
1947年5月3日。本紙の社説は、この日施行された新憲法についてこう記す。「われわれは今、日本の歴史にかつてみない更衣(こうい)を行って、思うさま四肢を伸ばしてかっ歩しようとしている。(中略)『人類普遍の原理』を実現して外には平和国家、文化国家として世界の進展に寄与し、内には自由と個人の尊厳を確保する真剣な努力を払おうとする建設の喜びこそ、今日の喜びの中核ともなるべきものなのである」新時代の幕開けへの高揚した気分がにじむ一文だ。そこに記された「平和国家として世界の進展に寄与する」道を、戦後の日本は踏み外すことがなかったといっていい。「必要最小限度の実力組織」として自衛隊を持ち、米国や国際社会の要請でアフガニスタン戦争やイラク戦争へ派遣してきた事実はあるが、そのつど特別措置法を制定し、派遣場所も「非戦闘地域」に限定するなど抑制的に対応してきたのが日本の歩みだった。その歯止めが憲法9条であったことは言うまでもない。戦争の放棄、戦力の不保持、交戦権の否認をうたい、理想と現実のギャップを抱えつつも、日本の政治を非軍事的な平和や安全保障へと方向づける大事な役割を担ってきた。自衛隊員が戦闘で1人も殺し殺されることがなかったのは、平和憲法の下で海外での武力行使はしないという一線を守ってきたからだ。・・・

防波堤を失うリスク

首相が日米同盟の強化に走る背景には、海洋進出を強める中国への危機感がある。日米の緊密化で抑止力を高めるのが狙いだ。だが財政難に苦しむ米政府は、法改正を利用して国際戦略を日本に肩代わりさせ、軍事的要求を強める可能性が高い。・・・戦後日本が掲げてきた平和主義は、単に理想を語る看板ではなく、米国の軍事的な要求を断る現実的な防波堤としての役割も担ってきた。日本が従来の9条の制約を踏み越え、米軍の補完的役割を担おうとすれば、中国や北朝鮮と向き合う以上に大きなリスクを背負うことにもなりかねない。
http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/

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戦後70年 憲法を考える 「不戦兵士」の声は今(2015/05/03東京新聞)
昨年は集団的自衛権の行使容認、今年は安全保障法制…。政権の次の狙いは憲法改正でしょう。戦後七十年の今こそ、しっかり憲法を考えたいものです。・・・故・小島清文氏が主筆兼編集長を務めました。小島氏が筆をふるったのは約十一年間ですが、山陰地方の片隅から戦後民主主義を照らし出していました。・・・例えば「民主主義の健全なる発達は個人の教養なくしては望めないし、自らの属する小社会の改善から始めねばならない」などと論じます。日本に民主主義を根付かせ、二度と戦争をしない国にするという思いがありました。何しろ経歴が異例な人です。・・・九二年に出した冊子ではこう記します。

<戦争は(中略)国民を塗炭の苦しみに陥れるだけであって、なんの解決の役にも立たないことを骨の髄まで知らされたのであり、日本国憲法は、戦勝国のいわば文学的体験に基づく平和理念とは全く異質の、敗戦国なるが故に学んだ人類の英知と苦悩から生まれた血肉の結晶である>憲法の平和主義のことです。戦後日本が戦死者を出さずに済んだのは、むろん九条のおかげです。自衛隊は本来あってはならないものとして正当性を奪い、軍拡路線にブレーキをかけてきました。個別的自衛権は正当防衛なので、紙一重で憲法に整合しているという理屈が成り立っていました。

しかし、安倍晋三政権は従来の政府見解を破壊し、集団的自衛権の行使容認を閣議で決めました。解釈改憲です。今国会で議論される安全保障法制は、他国への攻撃でも日本が武力行使できる内容です。「専守防衛」を根本から覆します。九条に反してしまいます。・・・<権力者が言う「愛国心」の「国」は往々にして、彼らの地位を保障し、利益を生み出す組織のことである。そんな「愛国心」は、一般庶民が抱く祖国への愛とは字面は同じでも、似て非なるものと言わざるを得ない>
 <われわれは、国歌や国旗で「愛国心」を強要されなくても誇ることのできる「自分たちの国」をつくるために、日本国憲法を何度も読み返す努力が求められているように思う。主権を自覚しない傍観者ばかりでは、権力者の手中で国は亡(ほろ)びの道を歩むからだ>・・・<戦争というのは知らないうちに、遠くの方からだんだん近づいてくる。気がついた時は、目の前で、自分のことになっている>
 「不戦兵士」の忠告が今こそ、響いて聞こえます。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015050302000131.html

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社説:憲法をどう論じる 国民が主導権を握ろう(毎日新聞 2015年05月03日)
「憲法とは、未完のプロジェクトである」−−。今年初めに亡くなった奥平康弘元東京大教授は、米国のある憲法学者の考え方として、こんな言葉を紹介していた。時代にそぐわない部分があれば、手直しすることもあっていい。だが憲法には、時代を超えて、変えてはならないものがある。自由や平等などの基本的な人権である。これらは「人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果」(97条)として、私たちが享受しているものだ。未完のプロジェクトとは、そうした理念に新しい生命を与えて、社会に根づかせていく、絶え間ない歩みのことにほかならない。・・・ところが、自民党の改憲草案は、政治家の擁護義務の前に「全て国民は、この憲法を尊重しなければならない」という項目を盛り込んだ。まず国民に憲法尊重義務を課す、という逆立ちした原理が、自民党の改憲論を支える思想なのだ。さかさまの憲法原理が目指す、改憲の目的とは何か。それは、国や政治家が、自分たちの手に憲法を「取り戻す」ことであろう。

http://mainichi.jp/opinion/news/20150503k0000m070078000c.html

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(天声人語)脅かされる学問の自由(2015/05/03朝日新聞)
時代の変化に的確に対応することは難しい。たとえば社会から自由が失われようとしている時、自由など今どき通用しないのだという頭ごなしの主張が世の中で幅を利かせる。すると人々はその変化を仕方ないこととして納得してしまう▼これは将基面貴巳(しょうぎめんたかし)さんが昨年出した『言論抑圧』が描く戦前日本の姿だ。東京帝大教授だった矢内原(やないはら)忠雄は1937年、軍国化を進める政府に批判的な論文を書き、辞職に追い込まれた。この「事件」を素材に、著者は同調圧力の怖さを示す▼当時のような危うい変化の時を、今まさに迎えている。そんな危機感から、「学問の自由を考える会」が先日発足した。国立大学の入学式などで国旗を掲揚し、国歌を斉唱するよう文科相が「要請」するという話が出て、大学教授らが立ち上がった▼強制ではない。儀式でのことであり、研究や教育内容への介入ではない――。こうした声に、会の代表で教育学者の広田照幸さんらは反論する。要請は必ず圧力になる。式自体も教育の機会であり、今回これを認めれば、政府が研究の中身にまで口を出す突破口になりかねない、と・・・▼憲法は学問の自由を保障する。歴史に見る通り、一度失った自由は容易に取り戻せない。きょう、改めて心に刻みたい。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11736761.html

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9条掲げず「まず一度改正」 首相、改憲へ迂回戦略(2015/05/03朝日新聞)
9条改正の「正面突破」ではなく、国会の合意形成を通じて国民投票への地歩を固める――。安倍晋三首相は、自民党の船田元・憲法改正推進本部長と2月に会う前から、改憲戦略の転換をにおわせ始めていた。・・・ 「手練手管で憲法改正をやろうとすれば政治的な勢いは出ない。緊急事態条項などで野党と合意を図る路線も、96条改正論のように『正面からやらずひきょうだ』と国民に見透かされれば、再び失敗する。今の戦略で本当にうまくいくのか、誰も読み切れてない」(石松恒、安倍龍太郎)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11736695.html

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(声)憲法特集:下 「不断の努力」をしているか(2015/05/03朝日新聞)無職 吉田岳史(埼玉県 23)

 「政治や憲法のことは難しくてよく分からない。私一人の力でどうにかできる問題ではない。だから、どうでもよい」と友人は言う。日本の安全保障政策の根幹が、大きく変わろうとしている時代なのに。おそらく、僕の友人で自民党の「日本国憲法改正草案」に目を通した人は少ないだろう。そこには「国防軍」や「領土等の保全等」といった言葉が並ぶ。まるで戦争を想定しているかのようだ。僕は、友人にひとつ伝えておきたいことがある。それは憲法12条に定められていることだ。「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない」と明記されている。つまり、僕たちがいま享受している国民主権、基本的人権の尊重、平和主義などは、国民の「不断の努力」によって保持されていると解釈できる。憲法や原発について考えない、投票に行かないという人が多ければ多いほど、頭の良い人たちのロジックによって、いとも簡単に僕たちの権利が奪われる可能性があるということだ。「権利」にはいつも「義務」が伴う。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11736624.html

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(声)憲法特集:下 今こそ「主権者教育権」を叫ぼう(2015/05/03朝日新聞)大学名誉教授 永井憲一(東京都 83)

現政権下で日本国憲法がないがしろにされている。国家主義だった敗戦前の日本に戻ってしまうのではないかと危惧する。集団的自衛権の行使を閣議決定で容認したのは立憲主義に反し、特定秘密保護法は戦前の治安維持法の復活を想起させる。中でも深刻なのは、教育現場の状況だ。道徳の教科化は戦前の軍国主義教育を担った「修身」の復活であり、国立大学に国旗掲揚や国歌斉唱を要請しようとする動きは学問の自由に反する。今こそ、私が提唱する「主権者教育権」が大事だと訴えたい。主権者教育は、憲法でうたわれた平和で民主的で文化的な国を担う主権者を育てるものである。「日本国民は、恒久の平和を念願し」「平和のうちに生存する権利を有する」とする憲法前文や9条、教育を受ける権利を定めた26条などで主権者教育権は保障されていると私は考える。国には憲法にのっとった教育をする義務があり、国民にはその教育を受ける権利があるのだ。国民それぞれは、人権として主権者教育権が保障されていることを自覚し、政府の国家主義的な教育には抵抗し、糾弾すべきだ。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11736616.html?ref=pcviewpage

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(声)憲法特集:下 権力縛るのが立憲主義なのに(2015/05/03朝日新聞)無職 三谷親子(神奈川県 75)

 国家には、権力を乱用し暴走する危険が常にある。だから個人の人権や自由を守るため、憲法によって国家権力を縛るというのが立憲主義だと教わった。長い人類の歴史から得た英知だと思う。非戦と平和主義を宣言する憲法9条は、先の大戦への反省から生まれた英知だ。武力を使わずに国際紛争を平和的に解決する。これこそ日本政府が積極的に世界中に提案すべきことだと思う。だが、安倍政権は日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の改定に合意した。日本の集団的自衛権行使を盛り込み、米軍への後方支援の地理的制限もなくした。9条の理念に逆行し、国民の平和への願いを無視したものだ。自民党の憲法改正草案も、国家を優先し、人権を大幅に制限して国民を縛ろうとしているように見える。立憲主義の本質を覆すもので、到底受け入れることはできない。憲法改正は、上から押しつけてはならないと思う。主権者である国民からも発意があって、国民全体が時間をかけて議論を重ねていく姿が自然ではないだろうか。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11736619.html?ref=pcviewpage

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(声)憲法特集:下 仕事通じて誇りに思った25条(2015/05/03朝日新聞)司法書士 浦田和彦(佐賀県 78)

 憲法25条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と高らかにうたっている。かつて私は4年間、法務局の人権擁護部で仕事をしたことがある。25条に反するとみられる事案に関わった。現場に赴き、実態を見聞きして検証し、被害者の救済に努めた。新幹線沿線や空港、バス発着所の近隣住民からは、走行音やエンジン音などに対する苦情の相談をよく受けた。強制的に罰則を科す権限はないため、騒音測定器による数値を示し、音を出している側への説明を根気よく重ねた。改良や改善につながったケースでは、被害者から喜ばれ、仕事のやりがいを覚えたものだ。私は人権擁護部の仕事を通じて、憲法25条をとりわけ誇りに思うようになった。昨今、改正に向けた動きが出ている。本当に国民のためになるのか、手にしている様々な権利は狭められないのか。もしそんな事態になるようなら、私は断固として反対したい。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11736622.html?ref=pcviewpage

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格差固定化しつつある51%・教育格差広がっている63% 朝日新聞社世論調査(2015/05/02朝日新聞)
朝日新聞社の全国郵送世論調査で、所得などの「格差」をめぐる問題について質問したところ、子どもの頃の生活水準が引き継がれ、格差が「固定化しつつある」は51%で、「そうは思わない」の44%よりも多かった。豊かな家庭の子どもの方がよりよい教育を受けられる教育の格差が「広がってきている」は63%に達し、「そうは思わない」の32%を大きく上回った。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11734770.html

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80カ国賛同、保有国は警戒 核兵器「法的に禁止」求める動き NPT会議(2015/05/02朝日新聞)
米ニューヨークで開かれている核不拡散条約(NPT)再検討会議で、核兵器の法的な禁止をめざす議論を始めようという動きが出ている。核軍縮の停滞に憤る非保有国が関心を寄せており、段階的な軍縮が唯一の現実的な道だと主張する核保有国は警戒を強めている。4月29日、オーストリアのクメント軍縮大使は一般討論で、同国が作成した文書「オーストリアの誓約」に80カ国近くが賛同したと述べた。「誓約」は、NPT加盟国に、核兵器の禁止や廃絶に向けて「効果的な措置」を追求するよう要請する内容。あいまいな言い回しだが、核兵器禁止条約の制定をめざす宣言とも理解されている。日本は賛同していない。オーストリアは28日にも、核兵器の非人道性と不使用を訴える共同声明を発表。こちらは日本を含む159カ国・地域が賛同した。

http://digital.asahi.com/articles/DA3S11734777.html

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(プーチンの実像)第3部・孤高の「皇帝」:8 メルケル氏「彼は別世界にいる」(2015/05/02朝日新聞)
 だが、シュレーダーの下で外相を務めたヨシュカ・フィッシャー(67)は、プーチンに手厳しい。プーチンは12年、4年ぶりに大統領に復帰して、「全く変わった」と語る。「明らかに新帝国主義的な考え方が支配するようになっている」・・・ただ、今も変わらない点がある。プーチンと欧州を取り持つ役割をドイツが担っているということだ。今年2月、ロシア、ウクライナ、ドイツ、フランスの4首脳がベラルーシで、ウクライナの停戦を目指して徹夜で協議した。関係者によると、話し合いを終始引っ張ったのはドイツのメルケルだった。プーチンとロシア語でささやき合うこともあったという。だがメルケルのプーチン観は、シュレーダーとはまったく異なる。欧米メディアによると、メルケルは昨年3月、米大統領のオバマに電話でこう語った。「プーチンは(我々とは)別の世界に住んでいる」
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11734775.html

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(社説)インフレ目標 「緩和の罠」を招かないか(2015/05/02朝日新聞)
 日本銀行がデフレ脱却をめざして2年前に掲げた「インフレ目標」を達成できなかった。日銀が30日に公表した「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)で、物価上昇率2%の達成時期を「2016年度前半頃」とし、1年以上先延ばしした。足元の消費者物価は、食料やエネルギーを除くベースで前年からの伸びはほぼゼロ。物価が急に上がりはじめる兆候はなく、日銀の修正目標でさえ実現はかなり厳しいだろう。・・・ 国民生活に及ぼすショックを少しでも和らげるために、インフレ目標と量的緩和の政策から一刻も早く脱するために動き始める必要があるのではないか。いまのままでは2%達成もできず、痛みを恐れて脱却もできない「緩和の罠(わな)」から逃れられなくなる。行き着く先でどのような代償を求められるのかさえわからないギャンブルに、国民生活を賭けることはできない。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11734738.html

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(声)憲法特集:上 「平和な国に」の初心忘れない(2015/05/02朝日新聞)無職 宮武孝吉(千葉県 77)

 赤紙で召集された父は戦死した。東京で営んでいた旅館は空襲で炎上した。家業の主だった祖母は避難先で病死した。戦争は我が家の基盤を破壊した。生き残った母は、私たち子ども3人を抱えて路頭に迷った。母の悲しみと生活の苦闘。日々の生活の一瞬一瞬を通して、戦争への憎しみは私の心に深く根ざした。それゆえに、戦争放棄と戦力の不保持をうたった新憲法の制定はうれしかった。理解を広げるために「新しい憲法 明るい生活」という小冊子がつくられ、全国で配られた。9歳だった私は、胸を躍らせて読んだものだ。誇張ではなく、生きる望みになった。もう決して軍隊は持たない、日本は平和な新しい国に生まれ変わるのだ――。これは当時の国民の決意であり、願いだったのではないか。その後も世界から戦争や紛争はなくならず、日本国内でも憲法の精神は揺さぶられ続けているが、今こそ私は言いたい。初心忘るべからず。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11734744.html

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(声)憲法特集:上 小さな一人の力の集まりが政治(2015/05/02朝日新聞)無職 松本由美子(群馬県 52)

 子どものころ、戦時中が舞台の本を読み、戦争が怖くてたまらなくなった。そのとき父から「日本には憲法9条がある。戦争を放棄し戦力を持たないと決められているから大丈夫」と教えられ、やっと安心した。「9条を守ろう」と子ども心に思った。長じて教員になり、子どもたちに9条の大切さを教えてきた。国語の教科書には「かわいそうなぞう」など、戦争に関する物語があった。子どもたちはその悲惨さに胸を痛めた。けれども、私が9条の話をすると「9条はすごいね。世界に誇れるね」と目を輝かせたのを覚えている。ところが、日本は変わろうとしている。首相は自衛隊を「我が軍」と呼び、「積極的平和主義」のもと、戦争の準備を進めているように私には見える。昨年の衆院選の投票率は52%台で、戦後最低だった。国民はあまりにも政治に無関心になっていないか。「自分一人が投票しても変わらない」というのは大間違い。政治は小さな一人ひとりの力の集まりだ。日本が間違った道を再び歩まないため、政治に関心を持とうではないか。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11734747.html

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(寄稿)憲法という経典 作家・島田雅彦(2015/05/02朝日新聞)
日本が自国のことのみならず、他国の戦後復興、人道支援にも貢献し、「世界の赤十字」たらんとしてきたことで獲得できた世界的信用は大きな財産である。外国人が日本人に対して抱く好印象もまた、平和主義を貫いてきたことに由来するだろう。「優しい日本人」のイメージはおそらく、現行憲法によってもたらされたに違いない。それを「平和ぼけ」と自嘲する人は改憲してでも「世界の警察」の片棒を担ぎたくてしょうがないようだが、そうすれば戦後日本が積み上げてきた信用は全て失われる。彼らはその損失を計算したことがあるだろうか?憲法、日米安保、自衛隊は戦後の三大矛盾と見なされてきた。歴代政権はアクロバティックな憲法解釈を行うことで自衛隊を派遣したり、集団的自衛権の行使を可能と判断したりと、その矛盾を拡大させてきた。

 敗戦後70年が経過して、自民党は憲法を改正することで矛盾解消を図りたがっているが、自民党による改正案も改正理由の説明も、さらには「戦後レジームからの脱却」というような政治方針も全て支離滅裂である。改憲の理由として自民党が掲げているのは、現行憲法は連合国軍の占領下で同司令部に押しつけられたものであり、国民の自由な意思が反映されていない、という主張だ。この押しつけ論が出てきたのは、自衛隊が発足し、アメリカが日本を極東における反共防波堤に仕立てるべく再軍備をさせるようになった頃、つまり1954年あたりからだ。自衛隊と憲法の矛盾はアメリカの政策転換に起因するのである。・・・現天皇が折々に護憲と平和への希求を明らかにされるのは、この事情も踏まえておられるからだろう。護憲と平和主義は吉田茂の「軽武装、経済重視」の路線とともに「戦後レジーム」になったわけだが、そこから脱却しようとすれば、戦前に回帰するしかない。・・・しかも「公益及び公の秩序」の定義は政府が勝手に決められるというのだから、改正案は国民主権を謳(うた)いながらも、思いきり国家主権的である。国民を最優先するように見せかけながら、ナショナリストたちが国家を私物化することを奨励するようなものだ。国民を国家の暴力から守る憲法から、国民を戦争に駆り出せる憲法へ。これは明らかに「憲法改悪」である。・・・確かに憲法と歴代政権の政治決定に齟齬(そご)はあるが、国民はその時々の政治情勢とは別に、憲法を平和の誓いとして受け継いできた。聖書がキリスト教世界の共通の倫理である博愛、寛容、自由の拠(よ)りどころであるように、憲法も日本人の倫理の経典であり続けた。

憲法には政治的な横暴、権力の濫用(らんよう)、人権の侵害から国民を守ることが謳われているが、それは我が国が他国から信用されるに足る国家であることの宣言なのであり、暴力の連鎖を断ち切る誓いでもあるのだ。そして、何よりも他国の戦争に巻き込まれないための保険として、機能してきた。憲法が戦争放棄を謳っている限り、自衛隊の海外派兵や米軍の後方支援に踏み切ること自体が違憲である。だからこそ政権の暴走は抑止されているのだ。政権の暴走にお墨付きを与えるような改憲は日本の自殺行為に等しい。・・・日本国民の間に広がる中国に対する不安とそれを払拭(ふっしょく)しようとするナショナリズムを利用し、日本により大きな安全保障上の役割を担わせ、アメリカの防衛費支出を軽減させる。現政権はその期待に応え、「積極的平和主義」をかざし、日本の安全保障環境を良好にすべく努めようとするが、その実態はアメリカの軍産複合体を支えるカモになることである。テポドンひとつ迎撃できないミサイル防衛システムを巨額で導入させられたり、沖縄の米軍基地の移転にやはり巨額の支出をさせられたりするだけだ。・・・現政権は、軍需産業を拡大し、日本の権益や邦人の生命、財産を守るという名目で自衛隊を紛争地域に出兵させることしか頭にないようだが、外交努力を怠り、安易に武力行使をすれば、そこから暴力の果てしない連鎖が広がることは、イラクやシリアの状況を見れば、一目瞭然である。紛争が拡大すれば、自衛隊による災害救助にも影響が出るだろう。

戦争は原発にも似て、莫大(ばくだい)な負の遺産を後世に残す。好戦的な政治家たちは戦争責任など取る気はさらさらなく、自分たちを支持した国民が悪いと開き直るだろう。彼らが自殺行為に走るのを止めなければ、私たちだって自殺幇助(ほうじょ)の罪をかぶることになるのだ。

現行憲法は単にユートピア的理想を謳ったものでも、時代の要請に応えられなくなった過去の遺物でもなく、日本が歩むべき未来に即した極めて現実的な指針たり得ている。

     *

 しまだまさひこ 1961年生まれ。83年、「優しいサヨクのための嬉遊曲」で作家デビュー。法政大学国際文化学部教授。芥川賞選考委員も務める。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11734728.html

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原発の電源比率  福島事故以前に逆戻り(2015/05/02京都新聞)
 東京電力福島第1原発の事故以前に逆戻りしている。そんな印象を強く受ける。2030年の電源構成比率で、原発を「20〜22%」とする政府案だ。事故前の28・6%より、少し減らすだけだ。期待の再生可能エネルギーは「22〜24%」にとどめている。経済産業省が有識者委員会に示し、大筋の了承を得た。原発推進を担ってきた経産省、委員には経済人が入っている。福島事故前と変わらない筋道ではないか。有識者委員会が5月中に報告書をまとめる。政府は与党協議を経て、6月上旬の主要国首脳会議(サミット)までに、電源比率を踏まえ温室効果ガスの排出削減目標を、正式に決める方針という。安倍政権の原発回帰は明白だ。アベノミクスによる経済成長に向け原発を活用する。原発停止で電気料金が上がったとして、経団連から原発を事故以前に近い水準まで増やすよう求められていた。福島事故の背景に経済最優先があったことを忘れたのだろうか。民主党政権下で「2030年代に原発ゼロ」が決まったが、これは討論型世論調査や意見聴取での国民の声を反映したものだ。いまも原発に頼らない社会を国民の多くが望んでいる。
http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20150502_3.html

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物価目標先送り  今こそ緩和策の検証を(2015/05/02京都新聞)
 日銀が「2年で2%」という物価上昇の目標達成時期を先送りした。それでも、実現性には市場関係者の多くから疑問の声が絶えない。金融緩和の限界が露呈してきているのは明らかだろう。これを機会に、安倍政権は「株高」とは乖離(かいり)した日本の経済実態を直視し、アベノミクスを練り直すべきではないか。一昨年3月に就任した日銀の黒田東彦総裁は、「異次元」とする大規模な金融緩和を導入し、翌4月から「2年程度」で物価を2%引き上げると宣言した。その時点でマイナスだった物価は2カ月後にはプラスに転じた。
 だが、昨年4月の消費税増税の影響を除くと、直近の物価上昇率は0%に近い。黒田総裁は「2015年度を中心とする期間」などと達成時期の表現を微調整して体裁を繕ってきたが、「16年度前半」と先送りを余儀なくされた。・・・市場にはさらなる追加緩和を迫る向きもあるが、賛成できない。消費も設備投資も伸び悩む中で、今以上に国債などを買い上げて市場にカネをまいても、喜ぶのは日本株売買の6割を握る海外の機関投資家などに限られよう。
http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20150502_4.html

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戦後70年 憲法を考える 9条を超える「日米同盟」(2015/05/02東京新聞)
 日本国憲法が施行される前から日本に駐留している米軍。今後はその米軍とともに自衛隊が地球規模で武力行使を含む軍事行動に参加するというのです。日本は太平洋戦争後の一九五二年、サンフランシスコ講和条約により、主権国家として国際社会に復帰しました。同時に日米安全保障条約(旧条約)が施行され、敗戦後から駐留していた米軍は正式に基地を置くことが認められました。旧条約は「日本は軍隊を持たないので国を守る手段がない。だから米軍にいてもらう」という内容でした。ただし、日本防衛についてはっきり書かれておらず、日本で暴動が起こった場合、米軍が出動できる決まりがあるなど不平等なものでした。・・・村田氏のいう世界最高額の米軍経費とは、日本の米軍経費負担(本年度約五千七百億円)がドイツ、韓国など米軍基地を抱えるどの国よりも多いことを指しています。経費負担は義務ではありませんが、日本政府は在日米軍について、他国が日本への侵略を思いとどまる「抑止力」と説明しており、米軍にいてもらうためには基地だけでなく、カネも差し出さなければならないというのです。在日米軍の姿をみていきましょう。在日米軍司令部によると米兵は四万二千人、日本政府が給料を支払う日本人従業員が二万五千人います。主要基地は青森・三沢、東京・横田、神奈川の横須賀、厚木、座間、山口・岩国、長崎・佐世保、沖縄の嘉手納、普天間などで陸海空海兵隊の四軍が使用しています。・・・「戦争しない国」の変質確かなのは、憲法が求め、戦後七十年かけて実現した「戦争をしない国」が変質していくということ。望んで従うのですから、米国が歓迎するのは当然です。憲法九条から逸脱すれば、平和国家としての国際的な信頼は失われていくのではないでしょうか。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015050202000160.html

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憂楽帳:海辺よ永遠に(毎日新聞 2015年05月02日 西部夕刊)

 海辺は自然の野菜畑、生き物たちの牧場だ−−。鹿児島の南方新社が出した「海辺を食べる図鑑」の帯に躍るキャッチコピーである。図鑑には、子供でも簡単に見つけて採取できる海藻、貝、エビやカニ、魚など136種のとり方と食べ方が写真と文で解説されており、ページをめくるうちに水産学科で学んだ学生時代がよみがえってきた。実習中、授業とは別に毎日手こぎ舟で刺し網を入れて魚を取り、貝や海藻を集め、夜に磯に出てくるタコを捕まえたりした。夜の宴の肴(さかな)にするためで、新鮮だからどれもうまいのだ。鮮烈だったのは夜光虫漂う夜の海の水泳。夜光虫は物理的な力を受けると発光するため、ひとかきごとに周りの海水が淡く光る。満天の星の下、光の航跡を描きながら泳いだ記憶は、甘美な夢だったのではと思うことがある。図鑑の著者は反原発を掲げて3年前の鹿児島県知事選に出て落選した南方新社の向原祥隆(むこはらよしたか)社長自身。実際に自分で探して、とって、調理し、食べてみて、5年がかりでまとめたという。「海辺が永遠であることを、心より祈ります」。あとがきに記された著者の思いに共鳴する。
http://mainichi.jp/opinion/news/20150502ddg041070008000c.html

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メディア時評:辺野古問題、メディアが試される=琉球大教授(政治学)・波平恒男(毎日新聞 2015年05月02日 東京朝刊)

 昨年12月の就任以来、翁長雄志沖縄県知事が求めていた菅義偉官房長官や安倍晋三首相との会談が今年4月5日、17日に実現した。各紙が伝えたように、二つの会談の焦点は現在進行中の「米軍普天間飛行場の辺野古移設」問題だったが、首相や官房長官は辺野古が「唯一の解決策」という従来の方針を繰り返した。一方、翁長知事は戦後沖縄の歴史体験に度々言及しながら、辺野古への新基地建設に反対する県民の「オール沖縄」的な考えを表明した。また、安倍首相との会談では、より強い表現で「辺野古は絶対に阻止する」との決意を表明し、いずれの会談後も沖縄県民から高く評価された。・・・翁長氏が言うように、沖縄の米軍基地は沖縄戦以来、住民の土地を強制接収して造られたもので、沖縄が自ら基地を差し出したことは一度もない。しかし今、危険な普天間飛行場に代えて辺野古に最新鋭の新基地が建設されれば、基地の島が恒久化される。翁長氏の言動は、このように考えて基地新設に反対する県民の「圧倒的民意」に支えられている。辺野古問題はこの国の民主主義と地方自治の真贋(しんがん)、その点でのメディアの感覚が試されている。(西部本社発行紙面を基に論評)
http://mainichi.jp/shimen/news/20150502ddm005070013000c.html

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平和のため 被爆語らねば 広島市佐伯区・倉本さん 読み聞かせ授業に参加(2015/05/01ヒロシマ平和メディアセンター)
広島市佐伯区の被爆者倉本洋子さん(85)が30日、同区の五月が丘小で被爆体験の読み聞かせ授業に参加した。これまで積極的に被爆体験を語ってこなかったが、集団的自衛権の行使容認や憲法改正の動きを知るにつれて平和への危機感が増幅。「命ある限り伝えなければ」と、病気を押して学校を訪れ、平和の大切さを児童に訴えた。(河合佑樹)
http://www.hiroshimapeacemedia.jp/?p=43804

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劇仕立てで憲法考える 広島市中区で3日(2015/05/01ヒロシマ平和メディアセンター)
 憲法をテーマにしたミュージカル風憲法劇「憲法チャチャチャ?〜世界に広がれ第9条〜」が憲法記念日の3日午後3時から、広島市中区大手町の県民文化センターである。全6幕で構成し、集団的自衛権や特定秘密保護法をテーマに、戦争放棄を定めた憲法9条や憲法が保障する国民の「知る権利」について考えるストーリー。オリジナルの歌や踊りも披露する。
http://www.hiroshimapeacemedia.jp/?p=43808

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福島第1、タンクの汚染水漏えい せき外流出なし(2015/05/01共同通信)
東京電力は1日、福島第1原発の汚染水を保管する地上タンク群のうち、「H3」と呼ばれるエリアの1基の基礎部分で水たまりが見つかったと発表した。タンクからにじみ出たとみられるが、タンクを囲むせき外への流出はないとしている。東電によると、1日午前9時半ごろ、パトロール中の協力企業の作業員が、タンク1基の基礎部分に約20センチ四方の水たまりを見つけた。水たまりの表面付近で毎時70ミリシーベルトと高線量のベータ線が検出された。
http://www.47news.jp/CN/201505/CN2015050101002159.html

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