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<SPOT NEWS16>2013/12/01・・・(ヒューマニズムの視点で捉えよう、判断しよう)

 


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【消費】学校で放射線測定学習 食品摂取の判断力養う(2013/08/02福島民報)

ベラルーシ・ゴメリ州ホイニキ地区のストレリチェヴォ中等学校内にある放射線文化センター。室内には放射性物質の検査に使う機器類が並ぶ。子どもたちが「これから食品に含まれる放射性物質を調べます。この機械では5分間で測定できます」と説明し、慣れた手つきで放射性物質の測定装置のスイッチを押した。子どもたちは教育現場で測定方法を学び、放射性物質に関する正しい知識を身に付ける。国の「賢い消費者」養成の第一歩だ。ベラルーシ、ウクライナに甚大な被害を及ぼしたチェルノブイリ原発事故から27年。ホイニキ地区は立ち入りが制限されている30キロ圏近くに位置し、今も土壌から放射性物質が検出されている。住民が安全な食料を口にするには、自主的に摂取の是非を判断する力が欠かせない、と国は判断。事故後、地区内の学校など6カ所に放射線文化センターを設けた。
 中等学校内のセンターでは、生徒が放課後の補講やクラブ活動などで放射性物質に理解を深める。検査機器の使用方法、国が定めた基準値などを学び、自ら農産物を測定する。住民が持ち込んだ食品を生徒が調べることもある。昨年は140検体を調べ、7%が基準値を超えたという。積み重ねた検査データを基に、分析にも取り組む。食品に含まれる放射性セシウムが減少傾向にあることも確認した。地区執行委員会のチェルニャフスカヤ・ジャンナ副委員長は「ここで生きていくため、何を食べるべきかを子どもの時から学ぶ必要がある」と意義を強調する。

ホイニキ地区には広大な農地が広がる。市場に流通する農産物は国の検査場で厳しいチェックを受けるが、自家消費野菜などは住民が自ら安全性を判断する必要がある。「事故当初は情報が得られず怖かった。でも今は、どの作物なら安心して食べられるか知っている」。地区内で開かれた住民と派遣団員の意見交換会。子どものうちから放射性物質や健康管理の対策を学んできた住民の言葉に、この土地で暮らすことへの自信がにじむ。東京電力福島第一原発事故で被災した本県は、住民の自家消費野菜を検査する測定機器を全市町村の公共施設などに配備した。持ち込まれた農産物を職員が測定している。平成24年度は約20万件を調べた。小中学校や高校では放射線教育が行われている。ただ効果的な教育手法、自ら測定し安全性を確認する能力の育成などについては、手探りが続く。派遣団長の佐藤俊市郎市教育長(64)は「福島の放射線教育は始まったばかり。実践的で充実した取り組みに向けて検討を続けなければならない」と語る。(本社報道部・鈴木仁)

※ウクライナ
旧ソ連崩壊に伴い1991年に独立した。ロシア、ベラルーシなどと隣接している。首都はキエフ。国土面積は60万3700平方キロで、日本の約1・6倍。人口は約4500万人。主要産業は鉱工業、農林水産業、建設業など。1986年に発生したチェルノブイリ原発事故で農地などが被害を受けた。

http://www.minpo.jp/pub/topics/jishin2011/2013/08/post_7777.html

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【流通】 市場の農産物全て検査 消費者と信頼関係築く(2013/07/31福島民報)

ベラルーシの首都ミンスクにある国営「カマロフスキー市場」。大通りに立地する広大な売り場に、新鮮な肉類や野菜、果物が並ぶ。1日平均5万人、休日には15万人が利用する首都最大の食品流通拠点だ。「消費者と信頼関係が構築されている」。トマシェヴィチ・リュドミラ副社長の表情には自信がみなぎる。面積は約3万平方メートルで、東京ドームの6割超。屋内施設と屋外に、農場や企業による約2000の食品売り場が並ぶ。市場には国営研究所(ラボ)が併設されている。運び込まれる農産物は原則として全て、チェルノブイリ原発事故を受け定められた法律に基づく放射性物質検査を受ける。販売する全品目が基準値以下と確認された場合のみ、産地や測定値を明記した認定書が販売者に交付され、売り場での営業が許可される。研究所は検査結果を地元新聞などに発表し、住民に伝えている。

放射性物質を取り込みやすいとされるキノコ類やベリー類、イノシシ肉など一部の食品を除き、過去10年間で基準値を超えたケースは確認されていない。原発事故から27年が経過し、放射性セシウムが減少していることが大きな要因とみられている。福島市視察交流事業派遣団の測定では市場の空間放射線量は毎時0.061マイクロシーベルトだった。検査を継続しているのは「安全な物しか販売していない」ことをアピールし続けるためだ。リュドミラ副社長は「検査を続けることが、消費者の安心につながっている。だから市場の食品に不安を持たれることはない」と強調する。団員の市食生活改善推進員協議会生活環境部長の阿部洋子さん(63)は「事故から時間が経過しているにもかかわらず、地道に検査を継続していることに感銘を受けた。本県でも参考にすべきだ」と述べた。(本社報道部・鈴木仁)

27年後も厳格さ維持

キャベツの芯はくりぬかれ、トマトのへたは取り除かれる。食べる状態にしてから測定する。食べた場合に体内に取り込まれる放射性物質を正確に把握するためだ。ベラルーシの首都ミンスク。「カマロフスキー市場」に併設された国営研究所(ラボ)の検査員は慎重に放射性物質の検査機器を操作していた。市場はチェルノブイリ原発事故から27年が過ぎても、厳格な検査体制を維持する。活気に満ちた売り場には、地元農産物に対する消費者の信頼感が漂う。

「食に関するあらゆるものを測定する。安全な食品だけが流通する仕組みだ」。ウクライナ国家家畜・植物衛生局の担当者は、生産段階の土壌や飼料、加工前の原料、市場で売る農産物に対する厳しい検査体制を力説した。ウクライナの首都キエフには43の市場があり、全てに国の研究所が併設されている。ベラルーシ同様、原則として販売する全食品の放射性物質検査を実施し、認定書を発行する。
農産物が市場に集まるベラルーシやウクライナと異なり、本県ではJAなど農業関係団体への出荷のほか、個人販売もあり流通形態は多様だ。主食のコメに関しては全袋検査を導入しているが、野菜や果物などは県が出荷段階で「市町村または旧市町村単位で三検体以上」を抽出して測定しているのが実情だ。農家や団体が出荷、販売する際に自主検査で安全性を確認しても、行政の「お墨付き」は得られない。団員からはベラルーシ、ウクライナの両国の国主導による検査体制を評価する声が出た。団員の農業大友伸夫さん(51)は「国や県が検査基準をしっかりと定め、農家の行う調査の結果を認証する制度を構築してほしい」と求めた。

※ベラルーシ
 旧ソ連から1991年に独立した。ロシア、ウクライナ、ポーランドなどと隣接している。首都はミンスク。国土面積は約20万7600平方キロメートルで、日本の半分程度。人口は約941万人。主要産業は工業、商業、農林畜産業など。1986年のチェルノブイリ原発事故で飛散した放射性物質により農地などが被害を受けた。

http://www.minpo.jp/pub/topics/jishin2011/2013/07/post_7767.html

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風知草:そんなに急いでいいのか=山田孝男(毎日新聞 2013年12月23日 東京朝刊)

橋山禮治郎(れいじろう)・千葉商科大大学院客員教授(73)=公共政策論=に言わせれば、リニア中央新幹線は「国家百年の愚策」である。そもそも需要がない。人口減少の時代、座席稼働率60%前後の東海道新幹線と競合する。他方、建設費が莫大(ばくだい)(9兆円超)で、どだい採算が合わない。しかも、電力を食い過ぎる。従来の新幹線の3倍から5倍といわれている。それに自然環境への負荷が過大。在来鉄道網との相互乗り入れ・連結ができず、不調和。ルートの大半が地下40メートル以深で、万一の時、乗客救出が困難……。論客の警告にもかかわらず、この計画は来年着工と決まっている。先々週の税制改正大綱で用地取得が無税になった。この決定は正しいか。リニア新幹線は本当に必要か。よくよく考えての選択か。今から問い直しても遅くはない。

リニア中央新幹線は東京と名古屋を40分、東京と大阪を67分で結ぶ。最高時速505キロ。2027年に東京−名古屋を先行開業、45年に東京−大阪で全線開業という計画である。半世紀前、開業まもない東海道新幹線に乗った谷川俊太郎の、《急ぐ》という題の詩を思い出す。

こんなに急いでいいのだろうか/田植えする人々の上を/時速200キロで通りすぎ/私には彼らの手が見えない/心を思いやる暇がない/(だから手にも心にも形容詞はつかない)

この速度は速すぎて間が抜けている/苦しみも怒りも不公平も絶望も/すべては流れてゆく風景

こんなに急いでいいのだろうか/私の体は速達小包/私の心は消印された切手/しかもなお間に合わない/急いでも急いでも間に合わない……

時速200キロでは人間の手が見えなかった。時速500キロなら人間の輪郭さえ見えまい。そんなに急いでいいのだろうか。問い直さずにはいられない。橋山は日本開発銀行(現在の日本政策投資銀行)の調査部長だった。慶大経済学部を出て開銀に入り、公共プロジェクトの調査・評価一筋。パリに本部があるOECD(経済協力開発機構)や米国の研究機関に出向し、内外の公共開発計画を研究してきた。開銀理事だったエコノミスト、下村治(1910〜89)に師事。結婚式の媒酌人が下村だった。下村は池田勇人内閣の高度成長政策の理論的支柱。石油危機後はゼロ成長論に転じ、世間をアッと言わせた。橋山は「必要か、リニア新幹線」(2011年、岩波書店刊)を著し、月刊誌に「リニア新幹線は再考せよ」を寄稿した(世界=本年12月号)。その執念は下村を思い出させる。「カネに振り回されるな。経済の目的は国民生活の安定にある。根本を見失うな」と説いた晩年の下村を。今秋、米国で講演した安倍晋三首相は「日本のリニア新幹線ならニューヨークとワシントンを60分弱で結ぶ」と売り込んだ。

リニア新幹線は1980年代、バブル絶頂期の自民党政権下で芽生え、バブル崩壊で忘れられた。2007年、経済再生コールの中で蘇生。JR東海主体の建設計画を追認、決定したのは民主党政権である。震災直後の11年5月。報道は薄く、国民的議論にさらされることはなかった。原発震災を経て地震列島の緊張が増す中、大地を切り裂く巨大開発は時代錯誤だ。今の新幹線の技術でも時速400キロは射程内という。500キロは幸福の指標ではない。(敬称略)=次回は1月6日に掲載します

http://mainichi.jp/shimen/news/20131223ddm003070071000c.html

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震災関連死 県内1605人に 避難長期化 直接死上回る(2013/12/18福島民報)

東日本大震災と東京電力福島第一原発事故による避難などが要因で亡くなったとして、県内の市町村が震災関連死と認定した死者数が1605人となり、地震や津波による直接死1603人を上回ったことが17日、分かった。避難の長期化が背景にあり、早期帰還や災害公営住宅の整備など避難者の生活再建が急務となっている。原発事故と死亡の因果関係の証明が難しくなっており、市町村からは「原発事故関連死」として新たな認定制度を求める声も上がっている。

■新制度創設求める声も
関連死が最も多いのは南相馬市の437人で、浪江町309人、富岡町202人と続く。東日本大震災に伴う死者数のうち、関連死が占める割合は岩手、宮城両県が各8%なのに対し、本県は50%と突出して高い。 復興庁が今年3月にまとめた分析結果によると、原発事故から一年以上経過した後に死亡した本県の関連死の原因別では「避難所などにおける生活の肉体・精神的疲労」が約5割、「移動中の肉体・精神的疲労」が約2割、「病院の機能停止による初期治療の遅れなど」が約1割だった。 1605人の原因別は明らかになっていないが、双葉郡の町村で最も関連死が多い浪江町の担当者は「先行きが不透明な中、狭い仮設住宅で暮らし続けるストレスは計り知れない」と分析。同様の傾向が続いているとみている。「早期帰還はもちろん、県には早く災害公営住宅を整備してほしい」と求めた。
震災と原発事故から2年9カ月が経過し、原発事故と死亡の因果関係の認定作業も一層、難しくなっている。南相馬市によると、関連死かどうかを判断する審査会で、遺族に資料の追加提出を求めざるを得ないため、認定作業に要する時間も長期化しているという。市社会福祉課の石川浩一課長は「原発事故による避難は前例のないケースなので判断が難しい。地震・津波による関連死とは別に『原発事故関連死』のような新たな制度創設が必要」と訴える。震災関連死に詳しい新開文雄弁護士(福島市)は「原発事故は住民に避難を強いており、憲法が定める幸福追求権や平穏に暮らす権利などを奪った」と指摘。「時間の経過や既往症などを理由に認定されない可能性もあり、原発事故に特化した新たな法整備が欠かせない」としている。

※震災関連死
地震や津波など震災の直接的な原因ではなく、震災後の避難生活など間接的原因で亡くなること。医師、弁護士ら有識者で構成する審査会が因果関係を認めると、直接死と同様に市町村が最高500万円の災害弔慰金を遺族に支払う。県によると、震災関連死に認定された1605人のうち、17日現在、災害弔慰金が遺族に支給されたのは1593人。
http://www.minpo.jp/news/detail/2013121812797

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(どうする 秘密法)スパイ小説、萎縮したら敗北 作家・真山仁さん(2013/12/16朝日新聞)

日米の宇宙開発競争をテーマにしたスパイ小説「売国」を週刊誌上で連載しています。特定秘密保護法案の動きを知って、この小説で法案を題材にしようと準備していたら、あっという間に成立してしまった。あぜんとしました。安倍晋三首相は、第1次政権からの宿願だった国家安全保障会議(日本版NSC)を機能させるため、特定秘密保護法を急ごしらえで持ち出した。目的と手段が逆転した典型例です。国家公務員の機密情報漏洩(ろうえい)を防ぐなら、すでに国家公務員法がある。スパイ対策なら、それに特化した法律にすべきでした。しかも条文に具体性が薄く、ときの権力者が思惑通りに解釈・運用できるスキがいくらでもあります。

マスコミを牽制(けんせい)する効果もあるでしょうが、官僚の萎縮効果は大きい。わたしは現実を相対化させたフィクションを書くため現役の官僚や検事にも取材しますが、これから情報は得にくくなるかもしれません。こんな危険な法律に対し、私たちは書くことで「表現の自由」の意味を示していく以外にない。来年2月ごろ、「売国」の主人公の地検特捜部検事は公務員の機密漏洩事件に切り込む予定です。特定秘密保護法を取り上げる小説の第1号になるでしょう。法律ができても作家は同じ仕事が続けられるのか、という実験です。萎縮してゆるい小説を書いたり筆を折ったりしたら、それこそ敗北ですから。

http://digital.asahi.com/articles/TKY201312150302.html?iref=comkiji_redirect

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(社説)ブラック企業 根絶のために行動を(2013/12/19朝日新聞)

ひどい働き方をさせられていると思ったら、役所に相談するなど行動を起こそう。社会の側はそれを受け止め、企業に是正させる仕組みを整える。この二つをかみあわせ、ブラック企業を根絶していきたい。過労やパワハラで社員が精神障害になった事業所で、その後も月80時間超の残業が続く。ある会社は、残業代が支払われない「管理職」が社員の7割を占め、うち半分は20代……。「若者の使い捨てが疑われる企業」への対策として、厚生労働省が実施した調査からは、すさまじい実態が伝わる。対象になった5111事業所のうち82%で、違法残業や賃金不払いなどの労働法令違反が見つかった。こんな風に思う人がいるかもしれない。「若いときには、がむしゃらに働いて当たり前。オレもそうだった」と。確かに、これまでも長時間労働や過剰なノルマはあったし、労働法令がいつも守られていたわけではない。それ自体、問題ではあるが、そこには「メンバーシップ型」と呼ばれる日本独特の雇用システムもあった。会社はいったんメンバーになった正社員に厳しい要求をするかわりに、育成の機会と雇用の安定を保障するのが前提だった。

ブラック企業には、この前提がない。体力と気力のあるうちは徹底的に働かせ、心身をこわしたりして「能力不足」と判断したら、退職に追い込む。まさに使い捨てだ。どう対応するか。今回の調査はハローワークへの相談電話や投書など、労働者の行動が手がかりになった。働く側が労働時間や賃金、採用・解雇について、労働法の基礎を身につけておくことが肝要だ。それがないと、会社の言いなりになってしまう。学校も、就職率を競うだけでなく、学生・生徒に命と健康を守る手立てを伝えてほしい。ただ、行動を起こしても、それを受け止める枠組みがなければ孤立するだけだ。労働者の不満の受け皿であるはずの労働組合の組織率は今年17・7%まで落ち込んだ。ブラック化しやすい新興企業では、組合がないのが普通だ。個人でも加入できるユニオン、労働相談を受けるNPOや弁護士、そしてなにより、労働行政の奮起にかかる。事後的な摘発はもちろんのこと、「使い捨て」の判断材料のひとつである離職率の調査・公表など、あらゆる取り組みを強化すべきだ。

http://digital.asahi.com/articles/DA2S10887419.html?ref=pcviewpage

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(どうする 秘密法)運用任せられない。足かせを 政治学者 宇野重規さん(2013/12/19朝日新聞)

政治の世界ではすぐに公開できない「秘密」もあるのでしょう。それは認めます。しかし、何をどの範囲で秘密とするか、本来は議論を尽くし、国民の理解を得て決められるべきです。最後は歴史の中で判断が妥当か審判を受け、検証されるべきです。ところが、秘密を限定的、時限的にする努力のないまま法律は作られてしまいました。秘密法は三権分立という政治システムの根源を破壊しかねません。第三者機関を行政の中に置き、外からの批判や検証を受け付けない。議会のもつ国政調査権も制限されるかもしれない。この法律で処罰された場合、不服なら裁判で救済を受けることが不可欠です。しかし、裁判になっても何が秘密かわからないまま罪に問われ、人権が守られない恐れがあります。一度できた法律をなくすのは難しい。けれど、運用する側へプレッシャーを与え、「足かせ」をはめることはできます。何が「秘密」か情報公開請求などによってチェックする。「おかしい」と声をあげ続けるのです。勇気がいりますが、市民が声をあげるのは最も民主的で正当な行為です。常識の範囲内で運用するので大丈夫だ、と政府は言います。しかし、拡大解釈の余地を残し、恣意(しい)的に運用される恐れのある法律は悪法です。民主主義に支えられたデモを「テロ」などと発言する人たちにはなおさら任せられません。

http://digital.asahi.com/articles/DA2S10887599.html?iref=comkiji_redirect

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(日曜に想う)国家優先、「和」のパワー損なう 特別編集委員・冨永格(2013/12/15朝日新聞)

ベルギーのブリュッセルは、美食の都としても知られる。ラテンとゲルマンの文化が交わり、四方の食材、調理法が出会っての恵みだろう。欧州統合の本拠になると、舌の肥えた外交官が集まり、故国の料理人が続いた。今年の夏、その街にBENTO(弁当)とDON(丼)を売る店が出た。営むのは当地で脱サラした池田成実(せいじ)さん(48)と大坂渉(わたる)さん(48)。昼の常連は近くの勤め人で、日替わり弁当や丼を持ち帰っていく。「国際都市の懐は深く、異文化の受け入れも早い」(池田さん)。栄養のバランスがいい弁当は各国に広まり、SUSHIのような外来語になりつつある。食は進化する。白飯を握っただけのおにぎりは、やがて海苔(のり)に包まれ、具が入った。丼物は江戸後期のうな丼や天丼に始まって、明治時代に牛丼と親子丼、大正期にはカツ丼が登場した。きょうも地球の片隅で、独創か邪道かはさておき、すしや丼の変種が生まれていることだろう。本来の和食は四季と旬にこだわり、山海の素材を美しく盛る。昆布や鰹(かつお)のだしは淡いが深く、一汁三菜の習いは長寿をもたらした。片やラーメンにカレー、トンカツなど、異国の皿を取り込んだ国民食も多彩だ。守るべきは守り、来る者を拒まない。和食がユネスコの無形文化遺産になった背景には、そんな食文化への関心がある。伝統や風土に閉じこもらず、「和む食」は世界の舌をそそり続ける。

こうした名声は大切にしたい。数値では表せないけれど、文化や国柄への敬い、憧れは決して侮れない。「なかなかの国だ」と思わせる魅力は、いずれどこかで当の国民を救う。軍備や経済のように他者を圧することのない、しなやかな安全保障である。MANGA、アニメ、ゲームといった、いわゆるクールジャパンの主役たちは、平和国家の産物だ。もとより息苦しい社会、せせこましい価値観からは豊かな創造力など生まれない。ただ悲しいかな、ソフトパワーは和風だしのように、はかなくもある。かつて世界の中心だったヨーロッパは、東の果てから渡来する磁器や浮世絵の洗練ぶりに目を見張った。幕末から明治、日本を訪れた異邦人は穏やかな民情に驚いたとされる。アジアの新興国が集めかけていた畏敬(いけい)の念は、しかし昭和に入り蒸発した。葬ったのは自らの軍隊、痛恨の極みは72年前、ハワイ真珠湾への奇襲だった。

破局への道は言論統制と弾圧に始まる。国が決める、民は黙ってついて来いと。朝日新聞もNHKラジオも国策の宣伝マシンになり果てた。体制の用心棒よろしく治安維持法ができ、6年後に満州事変、捕らえるべき危険分子をむやみに増やす全面「改正」から日米開戦まで、1年たらず……。希代の悪法に、おととい、13日の金曜日に公布された特定秘密保護法が重なる。秘密を愛する権力者がその気になれば、いくらでも解釈が広がる出来そこないの代物だ。知恵が足りないならまだしも、あえてアバウトに仕上げたのなら怖い。デモはテロ、秘密は報じさせぬと言わんばかりの講釈をたどれば、本音が透けてくる。情報公開の習いが未熟な国だけに、危なっかしい火遊びというほかない。なるほど、身の丈に余るハードパワーをもてあそぶ隣国があり、米国との疎通は欠かせない。コトは国家の存亡に関わると、大仰な言葉で新法の要を説いた人もいる。とはいえ前中国大使丹羽宇一郎さんが言う通り、国民あっての国家なのだ。本当に強い国をお望みなら、まず気遣うべきは巷(ちまた)の活力ではないか。もの言えば唇寒しの世では民は萎(な)え、国は衰える。「和」のパワーどころではない。

政官合作の秘がはびこり、ひそひそと伝承される社会は病んでいる。しかも罪人を生みながら、である。およそ「秘伝」というもの、しにせのタレくらいにしておきたい。

http://digital.asahi.com/articles/TKY201312140545.html?iref=comkiji_redirect

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(日曜に想う)老いゆくアジア即席ラーメン圏 特別編集委員・山中季広(2013/10/27朝日新聞)*

皆さんは月に何度くらい、即席ラーメンを食べますか?私は2日に1回です。食べ過ぎとわかってはいても、駐在先の香港では、日清食品の「出前一丁」が驚異的に浸透していて、外食生活では避けようがない。注文しなくても副菜として出てきてしまう。「出前一丁」はもはや商品名でなく、即席麺を表す普通名詞と化している。世界ラーメン協会(事務局・東京)の統計によると、即席麺の年間需要が昨年、世界で計1千億食の大台に乗ったそうだ。国・地域別ランクでは、上位から中国・香港、インドネシア、日本の順だが、4位に意外な国が入っていた。ベトナムである。米国を追い抜き、本家本元の日本にも迫る勢いだ。ベトナムの人々はいったいどんな食べ方をしているのか。商都ホーチミン市の街角で観察してみると、朝から大勢が屋台でズルズルやっている。1杯150円。通勤途中の客が多い。なにしろ職場にマイどんぶり常備棚を置く麺大国である。フォーやブンなど米麺が主流だが、即席ラーメンがぐんぐん伸びた。業界1位は、エースコック(大阪府吹田市)のハオハオという商品。スーパーの麺売り場でも主役の位置を占めていて、壮観である。

現地法人エースコックベトナム社を訪ねた。梶原潤一社長(61)によると、今年は進出20年の節目という。1990年代初頭、アジア各国の中からベトナムを選んだ。識字率や治安のほか人口ピラミッドも決め手になった。「富士のすそ野のような形が、市場の若さと将来性を示していました」日本品質を掲げて売り出したが、当初は苦戦続き。その後、味付けを現地社員に任せ、日本流の丹念な営業を重ねた。いまや全土に10工場を有し、市場の6割を押さえた。ベトナム麺業界が活況なのは、消費者である国民の平均年齢が28歳と若いからだろう。旺盛な食欲をまぶしく思いながら、地元の図書館で最新の人口ピラミッドを見てみた。驚いた。10歳以下の層が不自然なほど細いのだ。2050年の予想図を見ると、50代から下がすぼむ逆三角形。

日本型そのものではないか。

「そうです、少子高齢化がベトナムにも忍び寄って来ました」。ホーチミン市保健局栄養センター長のドウ・ゴック・ディエプさん(49)は話す。1960年代以降、政府は二人っ子政策を掲げ、出生率が下がった。「とかく若い国と思われがちですが、平均寿命は74歳。経済成長で食生活が急変し、高血圧症や心臓病が急増しています」ベトナム研究が専門の住村欣範・大阪大学准教授(46)によると、高齢者施策は緒についたばかり。「国民皆保険は整わず、日本のような介護保険もない。夜中に出歩く老人を託せる施設は農村部になく、家族は泣く泣く自宅の柱にひもで縛りつけています」

さて今回の滞在中、ベトナムの人々から日本の高齢者の現状を尋ねられた。〈あなたは長男なのになぜ親と同居しないの〉〈日本企業なら75歳を定年にすればいいのに〉。この半年、中国、韓国、タイなど、ベトナムより高齢化の深刻な国々を取材してきたが、最も盛んに尋ねられたのは、放射能汚染を除けば、日本の「老後」だった。日本経験が豊かな人ほど「日本はお年寄りに冷たい」と言う。在宅介護しか手立てがない国がアジアには多いのだが、「日本政府は高齢化問題にまるで無策。真剣さが足りない」と来る。おおざっぱに言えば、麺を盛んに食べるアジア文化圏は、親に対する孝を説く儒教圏と広く重なる。その国々がそろって高齢化を迎え、最も老いた日本の動きを注視しているのだ。年金崩壊、頼りない公的介護、不足するケアハウス――。各国が同じ難題を抱える。ともに老いゆく麺食文化圏で日本がまず果たすべき役割は何なのか。ホーチミン市の雑踏で麺をすすりながら考え込んだ。

http://digital.asahi.com/articles/TKY201310260580.html?iref=comkiji_redirect&ref=reca

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知的障害者が犯罪に? 権利守る手引き書、全国から反響(2013/12/15朝日新聞)

【堀江昌史】知的障害者が犯罪の関与を疑われたとき、家族や福祉関係者はどう対応すればいいのか。利用者が通報されて戸惑った経験から、大津市の福祉施設の職員らが作った権利擁護ハンドブックが反響を呼び、全国に広がっている。タイトルは、「知的障がいのある人が地域で安心して暮らすために ―逮捕の連絡を受けてから起訴まで―」。初版の1万2千部が売り切れ、10月には2万部が増刷された。

作成のきっかけは二つの「事件」だった。

「息子が交番に連れていかれた!」

2007年秋、夜遅くに大津市の知的障害児者地域生活支援センターに、利用者の母親から電話が入った。知的障害のある30代の息子が、道で見知らぬ子どもの頭をたたき、1週間のけがを負わせたという。電話を受けた相談員の越野緑さん(38)は「胸がドキドキして、『弁護士さんに聞くから待ってて』と伝えるのが精いっぱいだった」と振り返る。越野さんから相談を受けた大津市社会福祉協議会の山口浩次さん(51)が、同会の顧問弁護士に相談。被害者側に示談金を払い、逮捕はされなかった。ところが今度は、20代の知的障害のある男性が、駅で痴漢に間違われて通報されたと母親から連絡が入った。駆けつけた職員はどうしていいか分からず、慰謝料を払って場を収めた。越野さんたちは強い危機感を抱いた。警察官が話す「勾留」「送致」などの用語が理解できず、逮捕されたらどうなるのかが分からなかったからだ。

「保護者はもっと分からない。福祉に何ができるのか、一緒に勉強しよう」。山口さんの提案に、越野さんがうなずいた。2人は福祉関係者らと研究会を作り、刑事手続きの流れや、知的障害者を巡る犯罪の現状などを勉強。「質問に同意しやすい」「相手の気持ちを理解しにくい」といった知的障害の特性を警察や検察が知らず、障害者が取り調べの場面などで不当な扱いを受ける場合もあると知った。勉強の成果を、2010年11月、ハンドブックにまとめた。A5判、25ページ。逮捕などの連絡を受けた後の流れ、知的障害の特性と必要な配慮、被害者への支援などについて盛り込んだ。発行後、全国の親や支援者から問い合わせが相次ぎ、福祉関係の機関紙にも取り上げられた。罪に問われた知的障害者の裁判で、証拠採用されたこともある。大津市内では、ハンドブックを元に福祉や司法の関係者向けの研修会も開かれるようになった。今は、「取り調べの可視化」を求める2作目を準備中。越野さんは「情報が求められていたと実感している。今後は司法関係者や地域にも障害の理解を広げたい」と話す。

1部100円(送料別)。問い合わせは同センターの越野さんへ電話(077・527・0486)かファクス(077・527・0334)で。

■挿絵担当の高阪さん「親なら誰もが抱える不安」

ハンドブックの特徴は、内容をわかりやすく描いた挿絵だ。担当したのは、イラストレーターの高阪正枝さん(51)。作業所に通う自閉症の息子薫さん(23)との日常を描いた「イケイケ、パニッカー」(クリエイツかもがわ)などの著書がある。越野さんから、「当事者に関わって欲しい」と頼まれた。高阪さんは「知的障害のある子を持つ親なら誰もが抱える不安だと思った」と打ち明ける。例えば、毎晩8時ごろに散歩に出かける薫さん。好きなテレビ番組のセリフを大声で叫びながら、夜の住宅街の路地を走り抜ける。高阪さんは「痴漢や不審者と間違われて通報されたり、警察に職務質問を受けたりするのではないか」と不安になるという。「家族や福祉関係者はもちろん、身近に障害者がいない人にも、障害の特性を知ってほしい」と話す。

http://digital.asahi.com/articles/OSK201312110019.html?iref=comkiji_redirect

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サウジ初の女性監督 差別と闘った撮影現場(2013/12/13朝日新聞)

【石飛徳樹】サウジアラビア初の女性監督となったハイファ・アルマンスールのデビュー作「少女は自転車にのって」が、14日から東京・岩波ホールで公開される。10歳の少女ワジダが自転車を買いたくて、賞金の出るコーラン暗唱大会に出場する物語だ。男性優位のサウジ社会にあって、おてんばなワジダの頑張りが爽やかな感動を誘う。自転車をモチーフにした理由について、アルマンスール監督はこう語る。「自由やスピードといった現代性を象徴するものだからです。古くから映画で使われてきたアイコンでもある。ただ、サウジには映画の伝統がありません。ビットリオ・デシーカの『自転車泥棒』やスティーブン・スピルバーグの『E.T.』などが参考になりました」ワジダはクラスメートの悪口を言ったり、大人からお金をせびり取ったり、決して優等生ではない。「中東の女性は被害者として描かれがちです。しかし、差別的な環境の中で、したたかに生きている女性も少なくない。誰かの期待に応えるのではなく、自分の意思で運命を切り開く。そういう女性像を示したかった」ワジダと仲良しの少年アブドゥラが可愛い。ワジダの影響で、男性的な価値観が徐々に変わっていく。「サウジの男性はマッチョであることが重視されています。しかしアブドゥラのように女性とともに成長していく方がよほどチャーミングじゃないですか? 女が善で男は悪という描き方ではつまらないですしね」最近はネットを通じて海外の価値観が流入してきたが、まだまだ男女差別は残っている。「例えば、屋外で男女が一緒に働くことは禁じられています。屋外のシーンでは私は自動車の中から指示を出しました。ただ、ラジカルに社会を変えようとは思いません。心にしみこむように変わっていけばいい」

http://digital.asahi.com/articles/TKY201312130259.html

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エジプト・カイロで雪! 「100年ぶり」と大興奮(2013/12/14朝日新聞)

【カイロ=川上泰徳】エジプトで13日、首都カイロの郊外などで雪が降った。政府系アハラム紙のインターネットサイトでは雪だるまをつくる子どもたちの写真が掲載された。同紙はカイロでの雪は1979年以来とするが、住宅地が白く覆われるほどの雪が降ることはごくまれで、「100年ぶり」の声もある。13日のカイロは終日雨で、気温は10度を下回った。アハラム紙が雪の写真を掲載したのは、カイロ中心部から東に約40キロの砂漠の中にある新興の高級住宅地「マディナティ」。高層住宅の間の道路や公園は真っ白となり、手袋をした子どもたちが野球のボールほどの雪玉を持ったり、車の上に小さな雪だるまが飾られたりしていた。ふだんのカイロからは想像もつかない光景だった。

http://digital.asahi.com/articles/TKY201312140028.html?iref=comkiji_redirect

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中央アフリカ首都で戦闘、虐殺も 1週間で500人死亡(2013/12/12朝日新聞)

【プレトリア=杉山正】中央アフリカが、治安悪化の一途をたどっている。3月に武装勢力の攻勢で、大統領が国外へ脱出し、宗教対立に発展。首都バンギでは1週間で500人以上が殺害された。旧宗主国のフランスが軍部隊を派遣した。3月、イスラム教徒主体の武装勢力の連合体「セレカ」がバンギを制圧。指導者のジョトディア氏が大統領への就任を宣言した。ジョトディア氏はセレカの解散令を出したが、武装解除に応じない勢力が軍閥化した。9月ごろから、キリスト教系民兵組織「アンチ・バラカ」が武装闘争を開始。周辺のチャドやスーダンなどの武装勢力も入り込み、事態を複雑にしている。

比較的平穏だったバンギでも今月5日に大規模な戦闘が始まった。住民の虐殺、イスラム礼拝所の破壊などが発生。国連によると、バンギだけで新たに10万人以上が教会や空港などに避難した。国民の半数が緊急援助が必要な状態だという。現地で支援活動している国境なき医師団(MSF)の声明によると、武装集団がバンギの病院を襲撃した。処刑行為が行われ、病院前では十数人の遺体が目撃されたという。地方でも頻繁に虐殺が起きており、暴力による死者数は不明。援助団体も襲撃を受けるため、多くの地域で支援が届いていない。これに対し、1600人規模の仏軍部隊が事態の収拾を図っているが、9日に兵士2人が死亡した。事態を重く見たオランド大統領も10日にバンギに入った。AFP通信によると、武装解除を進め、来年後半までに選挙を実施し、正常化を図りたい考えだという。ただ、武装勢力は各地に群雄割拠。戦闘は広範囲に及んでおり、国全体の安定の時期は見通せないままだ。同通信によると、仏軍の作戦によって、首都からは武装勢力の姿がほぼ消えたものの、略奪は続いている。バンギに住むキリスト教徒のビンセントさん(39)は自宅を離れ、家族とともに教会に避難している。11日も銃声が聞こえているという。「家々や商店が略奪された。自分の家がどうなっているか、いつ帰れるようになるかもわからない」と電話で語った。

http://digital.asahi.com/articles/TKY201312110467.html?iref=comkiji_redirect

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森林破壊(ナショナルジオグラフィック)

森林破壊により地球上の森林が大規模に伐採され、しばしばその土壌の質に影響を与えている。森林はいまも世界の陸地の約30%を占めているが、毎年、パナマと同じ面積の森林がなぎ倒されている。いまのペースで森林伐採が進めば、世界の熱帯雨林は100年以内に完全に消滅してしまう可能性がある。森林伐採が行われている理由はさまざまだが、ほとんどは経済的な理由である。森林破壊の最大の要因は農業であり、農民は、穀物を植え、家畜を放牧する土地を広げるため森林を伐採する。多くの小規模農家が焼畑農業と呼ばれる方法で木を切り、それを燃やして、家族を養うために数ヘクタールずつ切り開いている。世界に木材や紙製品を供給する丸太の切り出しもまた、毎年無数の木が切り倒されている。世界に木材や紙製品を供給する丸太の切り出しもまた、毎年無数の木が切り倒される原因となっている。伐採業者の一部は違法に、より奥地の森林に道を作り、さらなる森林破壊を引き起こしている。都市部の拡散によっても森林が伐採される。また、森林伐採のすべてが意図的とは限らない。一部は、野火とその後の過度の放牧で若木の成長が阻害されるなど、自然と人的な要因が複合した場合もある。森林伐採は環境にさまざまな悪影響を及ぼす。最も衝撃的なのは、数百万もの動植物たちの生息地が失われることである。地球上の陸上生物の70%が森林に生息しており、その多くは、森林が破壊されれば生存できないのだ。

森林破壊はまた、気候変動も引き起こす。木を伐採すれば、昼間は日光を遮り、夜は熱を逃がさないようにしていた森の林冠がなくなる。これは動植物に有害となり、いま以上に極端な気温の変動が発生する。また、森林の土壌は湿気が多いが、日光を遮断する樹木がなくなれば、たちまち乾燥してしまう。樹木は水蒸気を放出して大気に戻し、水の循環を永続させる助けとなっているので、この役割を担う樹木がなくなれば、森林であった多くの土地は、瞬く間に不毛の砂漠に姿を変えるだろう。さらに樹木は、地球温暖化を促進する温室効果ガスの吸収という重要な役割を果たしている。森林伐採が進むと、温室効果ガスの吸収源が減り、大気中に存在する温室効果ガスの量が増加して、地球温暖化が加速して深刻化する可能性があるのだ。森林破壊の最も早い解決策は伐採をやめることである。近年、森林減少の速度がいくらか緩やかになっているが、現実の経済的事情から伐採がまったくなくなることはなさそうである。より現実的な解決法は、確実に森林の環境を保護するよう、皆伐(かいばつ)を制限し、森林資源を慎重に管理することである。伐採は現実になくなることがないため、その森林で伐採した分を補うだけの苗木を植え、森林資源のバランスを取るべきだ。新たに植林される数が年々増加してはいるが、その総数は地球上の森林面積に対し、ごくわずかでしかない。

http://www.nationalgeographic.co.jp/environment/global-warming/deforestation-overview.html?rk=0002

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知る権利もメルトダウン 落合恵子さん憤り胸に反対運動(2013/12/06東京新聞)

激しい怒りを胸に、反対運動に奔走してきた。東京都港区で絵本店を営む作家の落合恵子さん(68)は「私たちの『知る権利』がメルトダウンしてしまう」と原発事故の炉心溶融になぞらえる。参院特別委員会で可決された特定秘密保護法案。穏やかな生活を奪いかねないことへの懸念と、民意を無視して成立に向け強行した政権への憤りが湧き出している。東京電力福島第一原発事故以降、反原発を訴えてきた。「3・11で情報公開の大切さを嫌というほど味わっているにもかかわらず、世界の潮流を無視して逆行していくのが理解できない」と首をかしげる。事故直後、放射性物質の拡散を予測する「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)」の情報は公表されなかった。「さらに隠蔽(いんぺい)体質が推進されていく。市民の命と安全に生きる権利に反する」。反対集会や記者会見のほか、国会を囲む「人間の鎖」にも駆け付けてマイクを握り、法案に異を唱えた。

法案では公務員だけでなく市民も処罰の対象になる。「見せしめにも、恐喝にも使える。どこまで拡大解釈されるかは、さじ加減ひとつ」。専門家を呼んで原発に関する勉強会を開いているが、その参加者も処罰の対象になる可能性があるのでは、と危惧している。ごく当たり前の家庭で朝「行ってらっしゃい」と見送ったその夜、愛する人が理由も分からず帰ってこないという状況が起きるかもしれない。
「政府にとって都合の悪いことをしようとしたり、考えたり、話し合ったり。それだけで網に掛けることは可能。私たちの精神生活や思想の自由にも介入できる」採決強行、市民団体のデモを「テロ」と同一視した石破茂自民党幹事長の発言…。反対の声を押し切る姿勢こそがテロ行為だと考えている。「みんなが(法案の危うさに)気付いてきた。これ以上声が大きくなるのが嫌なんでしょう。十分な議論をはしょって決めてしまおうという、そのやり方自体が民主主義に反する」終戦の年に生まれた。中学生のころ、祖母に「なぜ戦争に反対しなかったの」と尋ねたことがある。答えは「みんなの目があった」「言った人間は捕まった」。その言葉が今の時代と重なる。
 「あの問いかけをした世代として、自分なりの『落とし前』を付けたい」。次世代の子どもたちのために、原発事故を体験してしまった国の人間として、いまの大人の一人として。これからも諦めず、抗議の声を上げていくつもりだ。

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013120690100153.html

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セシウム最高値 第一原発フェンス外の海水(2013/12/06福島民報)

東京電力は4日、福島第一原発港湾内にある放射性物質の拡散を抑制するシルトフェンス外側の2カ所で採取した海水の放射性セシウム137が、これまでの過去最高値を上回ったと発表した。第一原発海側の観測用井戸でも放射性物質濃度が最高値となった。 法定放出基準(90ベクレル)を下回るものの、シルトフェンス外側でも放射性物質の拡散がコントロールされていない現状があらためて示された形で、東日本大震災から1000日が経過した今も汚染水問題の解決策は見えない。 海水は2日に採取し、セシウム137が1リットル当たり9・2ベクレルと8・4ベクレル検出された。前回の11月25日の調査では4・5ベクレルと検出下限値未満で、これまでの最高値は8〜10月に採水した6・5〜5・8ベクレルだった。 東電は「(汚染水の)護岸からの流出は否定できないが、漏えい箇所は不明。推移を監視していく」としている。 第一原発の海側敷地にある観測用井戸の水からはストロンチウム90(法定放出基準30ベクレル)などベータ線を出す放射性物質が、過去最高値となる130万ベクレルの高い濃度で検出された。採取は2日で、これまでの最高値110万ベクレル(11月28日採取)を上回った。 海側の敷地では、汚染された地下水が海に流れ出るのを防ぐため、護岸の地中を薬剤で固め、ポンプで水を吸い上げている。東電は「吸い上げの影響で、高濃度の水が井戸付近に吸い寄せられている可能性がある。引き続き監視する」としている。 井戸は2号機の東側にあり、海まで約40メートル。事故直後の平成23年4月に極めて高濃度の汚染水が漏れたトレンチ(電源ケーブルなどが通る地下道)に近い。

http://www.minpo.jp/news/detail/2013120512555

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(秘密保護法案)被害を受けるのは子ども 教育研究者・大田堯さん(2013/12/05朝日新聞)

私は95歳。戦前の治安維持法の時代を生きてきました。社会が戦争に徐々に引きずり込まれていき、情報がなくなり、ものを考えることを無意識に停止させられていった。いま、そんな時代に近づいているのではと恐れます。この法案の根本問題は、知る権利が奪われることです。その事態がとっくに現実になっているのが学校です。1950年代、教科書検定が厳しくなり、歴史学者の家永三郎さんが教科書に広島や本土空襲の写真を載せようとして「暗いからダメ」「無謀な戦争という評価は一方的」と不合格にされ、裁判を起こした。私も原告側の証言者として30年余り戦いましたが、検定はなくせませんでした。文部科学相は検定で「教育基本法の目標などに照らし、重大な欠陥がある」と判断されれば、教科書を不合格にすると言いだしている。そこにこの法律ができると情報が一層統制され、教師は萎縮。被害を受けるのは子どもです。与党は「知る権利は守られる」と言うが、口約束はあてになりません。国旗・国歌法で政府は「強制しない」と答弁したが、教師が立って歌わなければ処分されています。

知る権利は人間が自分の頭で考える権利です。食事や呼吸と同様に生きるために欠かせません。その権利を危うくする法案を、与党は強行採決してまで通そうとしています。私たちの社会の民主主義の質が試されています。

http://digital.asahi.com/articles/TKY201312050228.html

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