かまきり

 秋は、かまきりが沢山、道路上で潰されている。
 勿論、潰した方は全く気が付いていない、馬鹿な車の仕業。 
 かまきりは、鎌を持ち上げて、歩く。
 ばったのように飛ばないし、スピードも無い。
 歩く。

 立ちはだかって見つめても
 逃げない。
 鎌を振りかざしてくる。
 人間が歩いていても、踏み潰しかねない。
 
 だから、猛スピードの巨大な車の前にはひとたまりもない。


 2013年10月27日
 京都府南丹市園部町の駅へ通ずる道路上の事

 駅から道路を歩いていた時、車道の端っこで かまきりが潰されていた。
 お腹の部分、下半分がぺちゃんこで、翅もぐじゃっとなっていた。
 そして上半身は、起き上ったままだった。

 私は、彼、或いは彼女が歩いている時に下半分だけが潰されて、もう死んでいるのだと思った。
 何度見ても、胸の痛む光景。

 一日経って、駅へ向かう帰り道、同じ道路を通った。

 するとその時、昨日見たかまきりは、頭をがくりと地面につけて、死んでいた。

 頭をがくりと地につけて死んでいる姿は、人のそれに似て、痛々しかった。

 その姿は、そのかまきりの無念さを物語っていた。

 昨日、上半身を起したまま死んでいる、と思ったかまきりは、その時、生きていたのだ。
 下半身をぺしゃんこに潰されても、なお、頭を高く上げ、傲然と、かまきりとしての尊厳を 
最期の最期まで失うまいとしていたのだ。

 私はそのかまきりの気高い姿を、そして力尽きて死んだ姿を、
 決して一生忘れることはできないだろう。

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